遇新熟時
 ボジョレー地方の新酒を今年も買いました。
 
 別に新酒の時期に合わせた訳じゃ無いけれど、最近は酒の良さを詠った漢詩ばかりに目を通しています。
 新酒といえば、白居易の漢詩で下戸の僕にも酒の良さが伝わる漢詩がありました。
 白居易の「效陶潜體詩十六首」の其四の第十三句から第二十二句までの酒を飲む愉しさを詠んでいるあたりが、ちょっといい感じです。

 その漢詩は次の通り。
 次に引いた漢詩の部分は、明馬元調校『白氏長慶集』に依りました。

 「開瓶瀉尊中
  玉液黄金脂
  持翫巵可悅
  歡嘗有餘滋
  一酌發好容
  再酌開愁眉
  速進四五酌
  酣暢入四肢
  忽然遺我物
  誰復分是非」

 これだけだと感じが掴めないかもなので、訓読文を次に引いておきます。
 訓点はその明馬元調校『白氏長慶集』を底本とした明暦三年の京都松栢堂林和泉掾覆明本の表記にほぼ依りました。

 「瓶(へい)を開けて樽中に瀉(そそ)ぐ
  王液黄金の脂あり
  持翫(もてあそび)て巵(さかずき)に悦ぶ可し
  歡び嘗めて餘滋有り
  一たび酌みて好容を發し
  再び酌みて愁眉を開く
  速やかに進む四五酌
  酣暢して四肢に入りて
  忽然として我と物とを遺る
  誰か復是非を分かたん」

 もののついでに僕の書いた現代語訳も次に。
 「瓶を開けて樽の中に注ぐと、美酒が黄金の脂のようである。
  手にとってもいい気持ちだが、嘗めると豊かな味わいがある。
  一度酌めば顔色がよくなり、二度酌めば愁いがなくなる。
  立て続けに四五杯飲めば、酔いが全身にまわる。
  ぼんやりとして自分と人との区別を忘れる。誰がこの是と非を分けるのだろうか。」
 
 この漢詩で白居易が飲んでる酒は自分の家で醸造した酒です。
 新酒を買って飲むのもいいけれど、自分で作って飲むのはもっと楽しいものなのかも知れませんねぇ。

編集 佳馨 : 自分でワインを作るセットがあるらしいので、やる気さえあればそこまで出来そうですよ。
編集 e.t. : 自分で名前までつけたり、ラベルを作ればさらに楽しさ倍増?