stilla
 理不尽とも思える理由で電話を切りました。
 「君は後五分経ってもまだ其処に存在しているだろうけど、今僕の目の前に在るハーゲンダッツは後五分経ったら完全に溶けてしまうんだ。僕は此を食べなくちゃならないから、切るよ。」

 実際僕の前には溶け掛けたアイスクリームが在ったが、僕は食べる気にならずに徒に全てが液体化していく様を眺めていただけでした。
 電話を切ったのは僕の状態に気付かれたく無く、心配されたく無かったから。
 嗚呼、でも本当は相手に何か求めてしまいそうな今の僕に気付いていたから。

 記憶の断片と僕の日記と二人の言葉、全てのピースを繋ぎ合わせて出来上がったパズルは亦僕に重く圧し掛かって来ようとする。
 一番気付かれたく無かったのは、押し潰された侭眼から液体を流し続けていた今の僕の愚かしさ。