偶々在った目の前の手鏡を手にとり、次に僕がしようとした事は、その手鏡を床に叩きつけて割る事。鏡に映った自分の姿は、僕がよく見知ったものとは異なる。たった其れだけなのについ衝動的に鏡を掴んだ手を下に振り翳そうとする自分が居る。
 別に鏡の中の僕の姿は醜い訳では無い。単に、違和感がするだけ。前髪がきっちりと揃った腰あたりまでの長い黒髪の少女。そんなのが僕であるなんて、いまいち受け入れ難い。
 4年前までの僕の姿なら馴染みがある。坊主がりと言っても可笑しくない程の短い髪型、決してスカートを履かない男のこにしか見えない女のこ。その外見がその頃は全く気に入ってなかった。むしろ自分が醜く思えて嫌っていた。
 髪形を変えただけで外見が変わったのはかなりの皮肉。その外見に違和感を持っているのは…もっと大きな虚無感を僕に齎す。