で、大槻能楽堂の「通盛」(みちもり)は、てっきり文楽なんかでよくある歴史上の人物を他の名前に変えて検閲をくぐり抜けるって技かとばっかり思って清盛の話と勘違いしてたら、その甥で、実在してた。
渡りに舟、とはちょっと違うけど、先日の筑前琵琶を彷彿とさせる、平氏の亡霊が舟に…ってことで、そう、平家物語の外典として、きっちり調べがついてないけど、琵琶法師は平家物語だけを語ってたわけでは決してない、ってことだと思う。

解説の先生は「能には救いがある、勝者でなく敗者が物語になる、これが日本人らしさ」とおっしゃっていたが私はそうは考えてなくて、平安時代中期の極楽浄土の信仰が少しずつ変質し、できただけって気がする。

ただ、確かにもののあわれはあって、これは西洋における聖書の外典のあり方とは根本的に違うので、むしろポイントはそこかと思う。

ええと、狂言「朝比奈」の閻魔大王めっちゃ弱いやん! とかろうそくだけでは暗いせいで(たぶん)照明足すのはどうなのか、とか鼓が杓拍子のように空気を斬ってたとか、演出のしかたがもう限界まできてる、とかうんたらくんたらあるけど、
…これ、初心者向けとは思えん(「葵上」あたりと比べると)。

もうこのところ畠山美由紀の、というか鈴木正人の、「遠い灯、遠い場所」ばかり聴いてる。今日だけで何十回か。
ガラス越しに、海と、空と、ながめながら、見上げて、聴く曲な気がする。