冬に咲く花


雨が降っているのも解らぬ程しとしと春雨のよう。
窓ガラスの外で降る雨音にも気づかない。

ふわふわ風が吹いた、花びらのような柔らかな風。
私の五感は全て耳に集まった。

いや違う。人が集まる場所には笑い声が聞こえる。

その笑いの中に入れば心が和む。
悩み苦しみ胃が痛んでも笑った途端に治ってしまう。

この町も、もうすぐ緋寒桜祭りが始まれば
人と人が円を描いたように丸く座り笑顔でいっぱいになる。

冬は内地の様々な都府県から沖縄見物の観光バスが賑わう。
私が「何処から来たのですか?」隣に居た人に問えば元気な声が返ってきた。

「新潟です。沖縄は暑くて堪らない。」と新潟の中年女性が呟く。
豪雪地帯から沖縄に来れば暑いと思うでしょう。

沖縄テレビから桜祭りの歌等が聞こえると
沖縄っていいなぁとつくづく思う。

緋寒桜を見ると梅の花のような形をしているので
梅の花を思い出す。

梅はほのかな香りが漂い、春を呼ぶ花みたいで好き。
緋寒桜は香りはなく、下をうつむき恥ずかしそうに咲く。

5年位前、とある温泉地に10日位一人で滞在した時も
梅園に行き、儚い香りの梅を見ながら思いっきり泣いた。

あの家族ともう1度やり直そうと決意を固め、
我家に帰った思い出がよみがえる。

静岡の我家の梅も咲き始めたかしら。
風に乗せて梅の香りを届けて欲しい。