静かなお正月
お正月の三が日は、家に居たり神社に初詣に行った程度で、
町も余り賑わって見えない様子だった。

今年のお正月はお店で売っているお節料理等は余り買わずに
お煮しめ僅かなお節とお雑煮、黄粉餅などを食し3日目は普通の食事を摂る。

「お節などお正月料理は買わない!」と言う細かい主人の方針通り、
お野菜を中心の粗食が続く日も多々ある。

昔、高校時代のお正月は貧しくて大晦日までバイト先に泊まり、
元日の朝、電車を乗り換えて帰った経験もある。

あの頃は焼いたお餅だけで十分楽しかったのは、
年老いた両親が傍に居て炬燵を囲み家族の団欒があったから。

毎晩、お布団には温かい湯たんぽが入っている事を母に感謝し、
お風呂を沸かしてくれた父に有難うと言えずに反抗的な態度をとった。

元日の夜から遊ぶ暇もなく、各科の宿題や勉強が山ほど残って、
僅か数日の間に終わらない為、登校すると追いつくのが大変だった。

解らない問題を教えてくれる姉妹や家族が欲しかったけれど、
友達のように塾に行く余裕もなく、自分なりに少し頑張った。

高卒でも有名企業に入社できたが、殆ど両親が返済に使ってしまい、
考えた末、親友の両親経営する料亭へバイトに夜と土、日は通った。

今は粗食でも惣菜が有り食後の果実が有り、
伴侶が口うるさい時は私に落ち度があるから。

何事もなく暮らせるだけで充分である。
黙々と家事をしていれば伴侶も機嫌が悪くはない。

何時も思う事だが人は一人では生きてゆけない。
誰かと何らかの関わりがなければ生きてゆけない。

だから人との出会いを大切にしたい。