菊の秋
霜月になると母の産まれた時節がきた事を思い出す。
五人兄弟の中の女一人で気の強い母だった。

母が亡くなってからもう何十年経っただろうか。
私の名前に一度も「ちゃん付け」してくれず呼び捨てだった。

父も同じ様に「××ちゃん!」なんて言わず「××!」と
呼び捨てだったと言う事は可愛げのない子だったと思う。

姉には「ちゃん付け」していたのは姉がお淑やかで
親からみて素直で甘える点が可愛かったのかもしれない。

私は、少女時代から両親が嫌いで親戚の家に遊びに行ったり、
男の子と跳び箱遊びやお転婆な遊びをしていた。

近所で「菊祭り」が開催され母と姉と3人で素晴らしい菊を見に行った時等、
姉は可愛いリボンとスカートはいて私は男の子のような格好をしていた。

それにしても様々な色や形をした菊が綺麗で忘れられない。
小学校入学前に姉が亡くなり両親の悲しみが私にも分かってきた様な気がする。

姉が亡くなり私一人になっても私は両親に甘える事もないので、
両親は親戚の従妹を可愛がっていた。

44才も年の離れた父に甘える所か、
中学生になる頃は親を哀れだと思う気持ちが増々強くなってきた。

私は、両親が亡くなってから両親の親心が少し分かり、
悪い点は忘れ良い点だけを思い出し心の中で供養している。

今頃、母は晩秋の風に吹かれ、
紺地に白菊柄の小紋を着て菊を眺めて喜んでいるかしら。

白菊は 母の形見の 帯の色