年末 
「いらっしゃいませ!」私は、店頭で照れながら
売上を上げる為に大きな声を出していた。

年末の下町は賑わって人通りが多く、
私と同じような年ごろの女学生が母親と買物をしている姿を見ては、

母娘で買物できるなんて良いなぁと見とれては、
「よそ見しないでお客様を呼んで売上に力を入れなさい。」
店主に注意をされていた。

北風の吹く夜に家へ帰っても年老いた両親は深夜には
眠っているため、そのお店の事務員さんの部屋に泊めて貰い、
元日の朝に自宅に帰っていたと思う。

あの頃のお正月と言っても「お節料理」等は無かった。
貧しい家庭のお正月は、お雑煮位でも御馳走だと喜ぶ。

普段は、ご飯の惣菜は何も無くて梅干しや生卵が有れば
何も要らないと思いながら生活をしていた。

粗食だったから痩せて30キロ有るか無いかの体重でも
元気で飛び跳ねていた。

それが今では贅沢な物を食し、あの頃の食事を摂っていたら
結核になっていたかも知れない。

蓮根、人参、筍、椎茸、梔子、里芋、蒟蒻、昆布巻き等の御煮しめを
煮て、その上に柚子を散らして出来上がり。

後は、少しのお節とお雑煮が有れば十分だと思う。
お客様が来たらその時は鍋料理でも。。。
夕方からぽつりと雨が降り出した。