エレベーターの事件と耐震偽装の事件で、繋がっている点があって、それは、
どちらも建築業界という、金額面で極めて厳しい熾烈な競争にさらされている業界であること。

「半値、8掛け、2割引き」という言葉を初めてきいたのは、10年くらい前だったか。
もちろんこれは、0.5*0.8*(1-0.2) ということで、元値の 32% にあたる。
定価(建築の世界では、諸条件により変動する施工の工賃を含めて「設計価格」といういいかたをするが)に対して、現場ではこのくらい熾烈な競争が行われている、ということ。
そして、例えとして出されたのが、エレベーターだった。

設計の世界でも、ダンピング受注なんてよくある話で、ただこれは基本計画-基本設計-実施設計-設計監理という流れやらいろいろ前提となる説明が必要になるのでここでは触れない。
ただ、例えば設計入札という制度があって、これは、これから描く予定の設計の質や内容とはほぼ無関係に、その設計業務の請負金額を入札で決めるというもので、こんな言葉が存在すること自体で自ずと知られるものかと思う。
その下請け、末端では、どうなっているか。

だからこれは、一種の悲鳴である。

さらに、尼崎の事故との関連について。
安全とは、効率とか採算性とかいった経済の言葉とは完全に無関係に、人の、献身的な、たゆまぬ不断の努力によって成し遂げられてきたこと、にもかかわらず、その経済性の名のもとに、どうしようもなく汚されてきていること。

今後の日本には、その価格に見合った安全しか存在しない。