別サイトアップ:須田国太郎展(京都国立近代美術館)
この問題が根深いのは、コスト優先のあまり、意匠や設備でなく、絶対に手をつけてはいけないはずの構造を、安価にあげるために偽った、という点にある。
意匠は、要は安い壁紙にするとか床の仕上を安くするとか、方法はいろいろあるし、設備については、合理的な設計(例えば給配管の位置を上下フロアで合わすとか)をすれば安くしていくことはできる。
しかし、構造は、特にマンション・ホテルのようにほとんどが基準階で平面レイアウトが同じ場合、工夫のしようがない。
マンションであれば、より安く、しかし意匠は高級感あふれる内装で、という圧力は昨今ますます強まっているわけで、この事件は、もうそんなこと限界なんだよ、という一つの悲鳴である。

もういろいろ繰り返されている点、だけどいまいち伝わる報道になってないので。
建築には、三者が関わる。建築主(施主、オーナー)、設計事務所、建設会社、である。
施主は、建物を企画し、建築物ができればそのオーナーとなる。
設計事務所は、施主の要望を図面として形にする。
実際に建てるのは建設会社である。
で、建築中のことが全然伝えられてないのだが、一番重要な点なので。
建てる際、建設会社には、設計事務所の描いた図面を渡され、建設費を割り出し提示して、折り合えば無事着工となる。
ここで留意すべきは、まだ何も建物が建ってないのに金額を決める(請負契約)、という点で、目の前に商品があって値札が付いている、という売買契約とは大きく違うことである。
だから、建設会社は、少しでも利幅を稼ぐために、設計事務所の描いた図面より安い材料・工法・施工をしようとし、それが手抜き工事や欠陥住宅の発生する素地、温床となる。
ここで、設計監理(管理ではない)の出番である。
設計事務所は図面を描いたら終いかというとそうではなく、建設会社の建築中、設計監理として、建設会社が図面通りの施工をしているか、図面で要求している品質は確保できているか、監理を行っている。
建設会社が現場で描いていく実際の図面は、全て、この設計監理者によって図面承認をもらい、その施工図に従って施工をしていく。
だから、設計事務所の業務は、1.図面を描くこと(設計)、だけでなくて 2. その図面通りの品質で実際に施工が行われているか監督していくこと(設計監理)、の 2点である。

分譲マンションの場合は、さらに販売会社、不動産会社等が関わってくるが、基本は同じこと。
いずれにしろ、変に安いものには必ずウラがあるわけで、
あなたは 100円ショップでマンションを買いますか?(←売ってないって)

まぁ設計事務所にしてみれば、耐震強度(えらい大ざっぱないい方だけど)が 1.0 だろうと 0.3 だろうと貰える設計料は同じわけで何のメリットもないので、今回の事件ではコスト削減の圧力に設計者が過剰反応しさらにワイロやら何やらが絡んでる、ってことだと思うので、あの設計者以外が設計した建物ならまぁ大丈夫と思うけど。

一つ恐い話を思い出した。
設計者はマンションでどこに住んでいるか。
意匠設計者は、眺めのよい最上階や最上階近くの高い階に住む。
設備設計者は、もしものときのライフラインのことを考え、2階、せいぜい 3階に住む。
構造設計者は、構造上一番安全な(設計になっているはずの)1階に住む。

いずれにしろ、ちゃんとした設計者は、少々高くても免震マンションに住んでおられたりするし。
地震の活動期に入ってる(~2025年くらい)んだから、南海地震も東海地震もみんなこの 10年か 20年かすれば起こってるんだから、もうちょっと敏感になった方がいいと思うよ。地震で死になくなかったら。