三つの城(ぐすく)は、人が少なかった。
万里の長城のミニチュアを思わせる石垣。
草木が繁る。風にざわめく。

海は青い。
打ち寄せる波に、白い砂々のしみわたる音。
誰もいない。

ちょっとした小路。
そっと守られたような横路にふと目を遣ると、色とりどりの蝶々が、ひらひらと10匹ほど。
静かに舞う。
近づいても逃げない。
ゆっくりはためく蝶達に、包まれる。

自転車でさまよう。
牛がいた。
打ち捨てられた牧場のように、柵で囲まれた野原。
と、ゆっくり、こちらを気にしつつ、ぶらぶらと、だんだん近づいてきていることに突然気づく。
距離を保とうと動くと、さりげなく牛も。
どうも、闖入者としてみられているようだ。
柵の切れているところまで目測する。
牛が走りはじめた時点でアウトだ。
意を決し、無関心を装い、静かにスピードを上げる。
・・・
たどり着いたとき、牛は、小走りだった。

バイクで雨に降られる。
夕暮れ。
レストランに入る。
生のピアノ。
心さまよう窓からのながめ。

* * *

茂る木と、取り巻く草々の中に、ひっそり休む髑髏。
焼酎を撒き、そっと手を合わせる。

2002/ 5/15
沖縄の施政権が日本に返還されて、30年の日に。