コッポラ。
再びコッポラ。
彼は、「私的な」映画が撮りたい、と言っていた。ゴッドファーザーや地獄の黙示録のようないわゆる大作ではなく、という意味だ。
しかし、地獄の黙示録を、いったい誰が、撮り得たというのか。
フリッツ・ラングか。黒澤明か。


そんな莫迦な。

 * * *

とてつもない作品でこそ激しくフラクタクルに能力を煌めかせる彼が、「私的な」映画、だなんて。
でも同時に、わかる気もするのだ。
理想と現実、なんてちゃちなレベルではない。
彼は、言っていた。
古今東西、芸術は、権力者のものだった。歴史が証明している。
しかし、パトロンの力を借りずに、初めて、芸術が自立しはじめている。
芸術が、世界を、変えられる時代がもうすぐくるのではないか。
みんなでそんな時代をつくっていきましょう。
アクターズ・スタジオの学生たちを前に、彼は、言っていた。
彼のことを夢想家と呼ぶのは簡単だ。
しかし、100万ドルの予算で1800万ドルの金をつぎ込んで映画をつくった男だ。
彼の予言を、誰が否定できよう。

脚本家になりたかった、と言っていた。
Zoetrope: All-Story は、彼自身の夢だったんだ。