「泥濘の町③」
<<インド>>--ヴァラナシ--


左端を行くオレンジ色のポロシャツを着ているのは、我々の相棒である。

私は右側を歩いていて、此処まで来て身動きが取れなくなってしまった。

この泥水をどう避けようか暫し躊躇していたが、前から来る自転車や物売りの屋台が通り過ぎた時に、汚れるのを覚悟で泥水の中に足を踏み入れたであった。

後でホテルに戻った時に、泥だらけになった靴を水洗いしたものである。

綺麗なサリーを着た女性たちは、一体どのようにしてこの悪路を歩くのだろうかと想像したが、ほとんどの人が、サンダル履きであることをこの時思い当たった。

サンダルなら、平気でこの泥水の中を歩くことが出来るから、これも生活の知恵であろうと妙な納得をしたのだった。