「アルテミス神殿」
--セルチュク--


エフェス都市遺跡に程近い場所に在る、セルチュクのアルテミス神殿跡の光景。

嘗て世界の七不思議の一つに数えられたこの神殿は、7回破壊され7回再建されたと言う。

紀元前356年にはただ自分の名前を歴史に残したいだけの男によって放火され、炎上した事も有ったと言う。

最盛期には直径1m20cm、高さ19mの大理石の円柱127本の上に聳える神殿は、アテネのパルテノン神殿よりも大きく、中には黄金や宝石に覆われた高さ15mのアルテミス像が置かれていたと言うから驚きである。

此処で使用されていた石材の多くは、イスタンブールのアヤソフィア建築などで持ち去られ、今では修復された石柱一本を残すのみであるから、歴史の変遷も恐ろしいものがある。

遠くに見える宮殿や城塞を入れ、石柱の天辺に巣を構えているコウノトリが飛び立つ瞬間を狙ってシャッターを切った。

偶然とは言え此処に巣が有る事が、歴史の寂寥感と、迫る夕暮れを併せて、胸に刻まれたものである。