満州国演義
船戸 与一
新潮文庫
船戸与一の遺作「風の払暁」「事変の夜」「群狼の舞」「炎の回廊」「灰燼の暦」「大地の牙」「雷の波濤」「南冥の雫」「残夢の骸」の全9作。
1944年生まれの著者だから本人の満州国経験は無く、すべて文献を調べたものだそうだ。面白そうな証言などあるが参考文献は第9巻の巻末23ページにまとめられているので探すのは困難。
大地の牙 [アメリカ経済がふたたび落ち込みはじめている。(略)最も手っ取り早い需要の創出は破壊だ、戦争なのだ」
雷の波濤昭和16年「戦陣訓は陸軍大臣東条英機名」が出した。「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪過の汚名を残すことなかれ」
南冥の雫「大本営は高学歴の有名人が好き」「楮和紙を蒟蒻糊で貼り合わせ、曹達液で煮立てグリセリン処理した強靭、気密性特殊紙
」で風船爆弾。
残夢の骸「沖縄県民はかく戦えり。県民に対し後世特別の五は医療を賜らんことを」「敵軍の勢力下にはいりたる帝国陸軍軍人軍属を俘虜と認めず」で「関東軍の将兵は俘虜ではない」のでシベリア強制連行にハーグ条約は適用されず。
他の著作に比べれば中心となる人物が敷島四兄弟では多すぎる。長男が外務官、次男が馬賊、三男が兵隊、四男が流されるまま、初めは四人を陰で操っていた間垣徳蔵。
精神論だけ独裁者東条英機の暗殺計画。無能な指揮官は軍法会議にはかけられず予備役に。
図書館から、はじめの三冊ほどは私と同様に読んでいる人がいたがあとは独走状態だった