モスラの精神史
小野俊太郎
講談社現代新書
図書館で立ち読みし、第八章「小河内ダムから出現したわけ」を読みたくて借りたのだが、東京湾?から小河内ダムに急に移動した理由が書いてあるわけではなかった。「映画内のドキュメンタリーとしての連続性を重視する本多猪四郎監督は、これが現実的な説得力をもたないのは当然承知だったはずである。だからこそ、あえておこなったこの変更には自然主義リアリズムを越えた理由が考えられる」とあり、奥多摩から渋谷への直進コースに横田基地などがあること、ヨーロッパ文学での「怪異を沈めた湖」「怪異を鎮める鐘」というモチーフの紹介される。いささかがっかり、とは言え、よくもまあと言うほど原作者達を含め大量の文献、さらにウェブサイトまで参照した労作だろう。