瞽女の幽霊
幽霊画で三代歌川広重の「瞽女の幽霊」と言う絵があります。

瞽女(ごぜ)は、女性で盲目の遊芸人ですね、昔は盲目でとなると職業も限られていました。

この絵は怪談話が元になっています。

むかし、都から東国へ向かう男が宿へ泊まりました。

夜中に隣の部屋から女性の美しい歌声が聞こえてきます。

男は、そっと隣の部屋へ入ると真っ暗の中で女性が三味線を弾いて唄っています。

その歌声にたまらなくなった男は、女性に話しかけて一緒になりたいと口説きました。

女性は何度も断りましたが、男は真剣に一緒になりたいと口説き、やがて女性もそこまで言うならと承諾して一夜を過ごしました。

朝になり、男が目覚めると朝の光りで、隣の女性が醜い瞽女である事がわかります。

男は、こんな女と一緒になれるかと宿を出て船着き場へ向かうと、瞽女が杖をつきながら追いかけて来るのが見えました。

男は船頭に刀と金を渡して、瞽女を殺すように頼みました。

船着き場に来た瞽女を、船頭は刀で斬り殺して川に沈めました。

男は、これで安心と元の宿屋に戻り泊まる事になりました。

すると夜中に宿屋の戸を叩く者がいるので宿屋の亭主が見ると恐ろしい姿の瞽女が「都から来た男を探している。中へ入れてくれ」と頼むのでした。

亭主は恐怖で、戸を閉めて「そんな客はいない」と追い返し、客の男は蔵へ避難させました。

瞽女はすごい力で戸を壊すと中へ入って男を探し回りました。

宿の亭主は怖くて自室で震えていると、蔵の方から大きな悲鳴が聞こえました。

亭主が夜が明けるのを待ってから蔵へ様子を見に行くと、中では男がバラバラにされ殺されていました。

これが瞽女の幽霊話ですが、男が悪いですわな。

瞽女さんにはいろいろ厳しい規律や決まりがあり、男に身を委ねると仲間から外され「はなれ瞽女」とならなければならなかったりしました、それほど大きな決断だったんですね。

固く約束したにも関わらず、朝になると男は逃げ出し、しかも追ってきた瞽女を無惨に殺させたのですから、幽霊になり祟られても仕方無いよなと思います。