納涼 茂山狂言祭2012
今年も、私が毎年楽しみにしている大蔵流狂言の茂山家の「納涼 茂山狂言祭2012」を、大阪の大槻能楽堂まで見に行ってきたよ。

狂言の茂山家と言えば京都の大蔵流の狂言で、人間国宝の茂山千作を頂点に、茂山千五郎家を中心とした人気の狂言家である。

いつも人気が高くてチケットも取りにくいのだけれど、特に夏に東京と大阪で行われる納涼茂山狂言祭は、リクエスト狂言とも言われて事前に行われたアンケートなどで狂言の曲目や演者が決められてるので人気が高く、ファンご好みの曲目や演者を見られると言うものだ。


○お話

茂山あきら


○梟(ふくろう)

山伏:茂山七五三
太郎:茂山童司
兄:茂山逸平
後見:増田浩紀

兄の逸平が山から帰ってきてから様子がおかしいので、弟は薬を飲ませたりしたがいっこうに効き目が無い。

心配した弟は、山伏に治療してくれるように頼んだ。

山伏が逸平に向かって一心に祈ると、突然に太郎は「ホホン」とおかしな奇声をあげる。

不思議に思った山伏が弟に尋ねると、兄は山で梟の巣を下ろした事が判り、さては梟が憑いたに違いないと考えた山伏は、梟の嫌いな烏の印を結んで懸命に祈るのだった。

ところが、兄ばかりか今度は弟にも梟が憑いて弟も鳴き始めてしまった。

驚いた山伏は、それでも何とかしようと兄弟の間を右往左往しながら祈り続けるうちに、とうとう自分にも梟が憑いてしまったのだった。



○痿痢(しびり)

太郎冠者:茂山千五郎
主人:茂山あきら
後見:井口竜也

主人は、急に客が来る事になったので太郎冠者を呼び出して、和泉の堺まで肴を買いに行くように命じた。

太郎冠者は行きたくないので仮病をつかって逃げようと「しびり」が来たと大袈裟に痛がった。

主人は、マジナイでしびりを治そうとすると、太郎冠者は自分のしびりは親からの遺伝でマジナイは効かないと言う。

主人は太郎冠者が仮病である事に気づいて、伯父から使いが来て今夜にご馳走をするから太郎冠者も連れて来いと言われたが、太郎冠者がしびりで行けないので、代わりに次郎冠者を連れて行くと言った。

それを聴いた太郎冠者は、このままではせっかくのご馳走にありつけないと思い、自分のしびりは言い聞かせれば治ると言い出し、足に向かって治るように言い聞かせ、そして治ったと言って元気に飛び跳ねて見せる。

主人は治ったなら堺へ行けと命じると太郎冠者は、またしびりが起きたと言い訳する。



○花子(はなご)

夫:茂山宗彦
女房:茂山正邦
太郎冠者:茂山逸平
後見:茂山七五三・茂山あきら


夫は、以前に美濃国野上の宿で馴染みになった遊女の花子が都へ上って来て、自分に会いたいと言う手紙を貰う。

そこで、何とか花子に会いたいと思い、女房に疑われないように家から外出できるように、持仏堂に篭って一晩座禅をくむと言って何とか外出することが出来た。

座禅の妨げになるから決して見に来るなと女房に念を押した夫は、さらに万が一に備えて嫌がる太郎冠者に座禅衾を被せて身代わりにすると自分は花子に会いに出かけていった。

女房は、やはり気になって様子を見に来ると座禅衾を取るとそこに居たのは身代わりの太郎冠者である。

怒った女房は太郎冠者の代わりに座禅衾を被って夫の帰りを待ち受ける。

やがて帰って来た夫は、太郎冠者に語ってるつもりで花子との逢瀬を小唄交じりに聞かせるのだった。

しかし、座禅衾を取って表れたのは怒りと嫉妬で燃えた女房だった。




今年も、茂山家の狂言を堪能できた。

今回は、狂言の中でも一時間近くかかる大作の「花子」を、大阪では兄の茂山宗彦、東京では弟の茂山逸平と兄弟で演じるのが目玉となっている。

今日の公演では茂山宗彦さんが熱演してうまく演じて良かったよ。

いつも人気の茂山家の狂言会だけど、最近は御高齢の方が見に来られるのも増えているみたいで、今日も能楽堂への道を訪ねられたのが縁で初めて狂言を見に来られた御婦人とお話しする時間があったのだが、「歳取って家にいるよりもいろいろと興味持ちたい」と話してられて、そういう御老人が元気で良いなぁって思ったよ。