十五大明神
京都の祇園にある先斗町と言えば舞妓さんや芸妓さんの花街として知られている場所である。

その先斗町を四条から上がった、西側十五番路地と言う狭い路地の中ほどに、異様な物が置かれている。

薄暗い中で大きな赤い箱のような物が設置されているのだが、それにはたくさんのシールのような紙がベタベタと張りまくられているのだ。

実は、この赤い物は祠であり、貼られているのは千社札なのである。

「十五大明神」(そごだいみょうじん)と言われる神様である、貼られている千社札も場所柄か祇園の舞妓さんや芸妓さんと思われる名前ばかりである。

どうして、この先斗町の真ん中に祠が祀られているのか、それにはもちろん理由がある。

昭和52年の春の事だと言う。

深夜に少し南のお茶屋から火が出て、この一帯が火災になってしまった。

風の向きもあって火災は付近を焼きながら北の方に広がっていった。

しかし、強かった火勢が、この十五番路地で止まって類焼が抑えられることになる。

翌日に、その場所に類焼が止まった場所に行って見ると、そこにあった信楽焼きの狸が真っ二つに割れていたのである。

ちょうど火災が止まったところにあった「ますだ」と言うお店のおかみが、この狸が身代わりになって火事を止めてくれたのだという話になり、祠を造って狸をお祀りしたのが十五大明神の始まりだそうだ。

先斗町の真ん中と言うこともあり、舞妓さんや芸妓さんのお参りが多いのか、祠にはたくさんの千社札が貼り付けられている事から深く信仰されているのだろう。

さて、この十五大明神には怖ろしい都市伝説が語られている。

祠の下にはお賽銭箱があるのだが、このお賽銭箱にお金を入れると、テープが流れて京都言葉の女性の声で

「スッポコポコポン、スッポンポン、おおきにようお参りしておくれやした・・・今日のあんさんの御神籤は・・」

と音声が自動再生されて御神籤で占ってくれるのである。

ところが都市伝説では、時には不吉な御神籤を読む事があると言い

「・・・大凶どす、振り返ったらあきまへん。うち、もうそこに来てまっせ」

となり、思わず後ろを振り返ると顔の焼け爛れた舞妓さんが立っていて襲い掛かって来るのだと言う。

なんでも、火事で焼け死んだ舞妓さんだそうであるが、若い人の間で流行りそうなたわいない都市伝説である。

ちなみに、今はお賽銭箱は故障してるのか、お賽銭を入れても話さなくなっている。


また、この付近も狭い路地で暗くて恐い雰囲気なのもあるのだろう。

ただ、千社札を貼ってからお参りすると無事なのだそうだ。

でも、お祀りしているのは神様なんだから、そういう怪談にしてしまうのはいかがなものだろうか。