未完の贈り物
倉本美香さんの「未完の贈り物 娘には目も鼻もありません」を読了した。

元・国際線客室乗務員で現在はアメリカで結婚して暮らしている著者の美香さんは、アメリカの産院で女の子を出産したが、担当の産科医は誕生した新しい命に一言の祝福も陳べずに怒ったように部屋を逃げ出すように出て行った。

そのまま数時間にようやく対面できた赤ちゃんには目も鼻も無かった。

それから、千璃(せり)と名付けられた女の赤ちゃんと御夫婦とのアメリカでの壮絶な治療生活が始まったのだった・・・


私のお友達にも少し不自由な所のあるお子さんを持たれている方がおられるので、読んでいてお友達やお子さんの苦労が重なって何度も本を閉じて読めなくなった。

読みながら小さな赤ちゃんが何度も手術を受けることに心が痛む・・・私でさえそうなんだから御両親の痛みや苦しさはいかばかりだろう。

また、日本と違ったアメリカでの治療がとても大変で費用も莫大になることに考えさせられてしまう。

何かあるたびに気遣うよりも自分に責任が無い事を強調するナースたち。


「障害も個性の一つ」・・・私は決してそんな簡単な言葉で片付けられるとは思わない。

「障害児は親を選んで生まれてくる」・・・私は選ばれるほど立派な人間じゃない。

でも現実として、千璃は目鼻を持たないまま、今ここに存在する。

そういう母である著者の言葉が胸に重い。


涙よりも心に痛みを残す作品であった・・・少しでもこの御家族に幸運と平穏が訪れますように。