寅の寺
少し前で昨年末の事だけれど、奈良の「信貴山朝護孫子寺」に行ってきた。

今年は寅年だからね、寅に所縁のあるお寺といえば信貴山を思い浮かべてしまう。

ちょうど大阪と奈良の境目付近の生駒山系にあるのだけれど、遠かったよ。

うちからだと、京阪バスー京阪電車ーJR環状線ー近鉄大阪線ー近鉄信貴線ーケーブルカーー近鉄バスとたくさん乗り換えてようやく到着である。

信貴山も歴史のある古刹である、なぜ寅に縁があるかと言うと創建時の伝説に関係がある。

今から1400年以上も前の聖徳太子の頃である。

聖徳太子は、物部守屋を討伐せんと河内稲村城へ向かう途中で、この山に至った。

聖徳太子が戦勝の祈願をすると、天空から毘沙門天王が出現し、太子は必勝の秘法を授かたのである。

その日が、奇しくも寅年、寅日、寅の刻であったのだった。

聖徳太子はその御加護で勝利し、自ら天王の御尊像を刻み伽藍を創建すると、信ずべし貴ぶべき山「信貴山」と名付けたのである。

それ以来、信貴山の毘沙門天王は寅に縁のある神として信仰されているそうだ。


また朝護孫子寺の名前にも謂れがある。

醍醐天皇が病気となり、勅命により命蓮上人が毘沙門天王に病気平癒の祈願をすることになった。

そして加持祈祷のご利益もあり醍醐天皇の病気は、たちまちにして回復し癒えたのである。

それにより醍醐天皇の、朝廟安穏・守護国土・子孫長久の祈願所として「朝護孫子寺」の勅号を賜ることとなったという。

山の上のお寺なだけに澄んだ空気の中で、お寺の参道でまず迎えられるのが巨大な張子の虎である。

さすがに虎にゆかりのあるお寺であり、その張り子の寅は大きすぎて下からでは顔が見えない。

これが、よく見かける首振り虎になっていて、強い風が吹くと首がゆらゆらと揺れる仕掛けになっている。

また、その近くには二匹の寅の置物も置かれている。

境内のあちこちにも寅にまつわるものや、寅の石像などが祀られていて、寅の狛犬ならぬ狛寅が置かれているところもある。

面白いのは、寅の体内くぐりと言うのもあって前と後ろが大きな寅の口になっていて、その口から中を入っていってお参りすると、下が四国八十八ヶ所の砂が埋められていて、お参りしたのと同じ御利益があるそうだ。

笑寅と言う石像は信貴山で最古の寅の石像だそうで、以前はもっと恐い顔であったそうであるが、火災に遭って焼けてから笑っているような穏やかな表情に変わったと言う。

他にも、いくつか金網で囲まれた寅の像がいくつかあるが、これは御利益があるからと石像を削って持ち帰る人が増えたために、金網で防ぐようにしたのだそうだ。

また寅が三匹集まっているのは三寅の福と言って、寅年に寅年生まれの人が寅のお寺に参ることで寅が三つそろい、福が得られると言う事らしい。

朝護孫子寺は山をお寺としているために、広い境内に多くの塔頭があり、本堂も山の崖の上のような場所に建てられているので見晴らしが凄くよくて爽快である。

とにかく、あちこちに寅が置かれていて、それを探して歩くだけでも楽しかったりした。

遠いので、なかなか行き難い部分もあるが、足を伸ばして寅年の今年にお参りしてみるのも良いのではないだろうか。