春狂言2013
今年も、私が好きな京都の大蔵流狂言の茂山家の「春狂言」の時期になった。

毎年楽しみに見に行っていて、今年も大阪の大槻能楽堂へ見に行ってきたよ。


○お話:茂山 逸平

始めは、茂山逸平さんによるお話で、狂言は子供の遊びの「ごっこ」の延長のような物で、何も無いのを見立てて成り立っていると言う話。

また、今回の狂言の曲目が動物に関したものが続くので、動物物の狂言の裏話や苦労話のようなお話をされて盛り上がった。


○「隠狸」
鷺流台本より創作
作・演出:茂山あきら

太郎冠者:茂山あきら
主人:茂山童司
後見:増田浩紀


太郎冠者は、主人に内緒で狸を捕らえて売っていた。

それを噂で聞いた主人は、太郎冠者に狸釣り(狸捕り)の噂が本当か尋ねると太郎冠者は知らないと嘘をつく。

そこで主人は太郎冠者に来客にご馳走する狸汁を作るために市へ狸を買ってくるように命じた。

狸釣りがばれそうになった事を知った太郎冠者は、急いで昨日捕まえた狸を市へ売りに出かけた。

一方、主人は太郎冠者の嘘をあばこうと酒を持って市で待ち受ける。

そこへ現れた太郎冠者は、その場をごまかして逃げようとするが、主人は太郎冠者を呼び止めると無理やりに太郎冠者を相手に酒宴を始めた。

始めは狸を隠そうとしていた太郎冠者も、酒を呑むうちに主人に誘導されて狸釣りの事を話し、しかも舞を舞ううちに主人に狸を取られてしまう。


隠狸は和泉流などではあるが、大蔵流には現在台本の存在しない作品であるが、大正時代に途絶えた鷺流の台本を基に、茂山あきらさんが創作し、今回初上演されることになった。

狸を隠そうとする太郎冠者と、それを酔わせて取り上げようとする主人とのやり取りが面白い狂言だった。



○「魚説経」

出家:茂山七五三
都近くの男:茂山逸平
後見:井口竜也

摂津国兵庫の浦の漁師は、漁を行う殺生が嫌になったので、急ににわか出家となる。

しかし、にわか坊主なので経も知らないし生活もできないので、都へ上がって名所旧跡を見物し、良い所があればそこへ就職しようと考えて旅に出て、旅をしながら都への案内を出来る人を待つことにした。

その旅路の途中、僧は信心深い男と出会った。

男は持仏堂を建てた物ので法事をしてくれる住持がいないので、その僧を探しており、さっそく出家を連れて帰ると住持にし説経をするように頼む。。

しかし、もともとは漁師だったため経を知らないにわか出家なので経や説法もできない。

そこで苦しまぎれに、魚の名づくしでもっともらしく説法のように語るのだった。


お経など詠めないにわか出家が、魚の名前で駄洒落のように語っていく様子が面白い狂言だね、これは魚尽くしが見事だよ。



○「止動方角 」

主人:茂山千五郎
太郎冠者:茂山正邦
伯父:丸石やすし
馬:島田洋海
後見:茂山童司



主人は、茶比べをしたくて、伯父の家から茶や太刀や馬まで必要なものを借りてくるように太郎冠者に命じる。

伯父は快く貸してくれて、その際に馬は後で咳(すわぶき)をすると暴れだすので、「寂蓮童子六万菩薩、しずまり給へ止動方角」と唱えると大人しく鎮まると教えてくれた。

太郎冠者が帰路につくと短気な主人は待ちきれずに途中まで迎えに出て来ていた。

主人が馬に乗り帰路に着くが、帰りが遅いと叱り続けるので、太郎冠者は馬の後で咳をして主人を落馬させる。

太郎冠者は、密かに教えてもらった呪文で馬を鎮めると、再び主人を馬に乗せるが、また太郎冠者を叱り続けるので再び落馬させてしまう。

落馬に懲りた主人に代わり太郎冠者が馬に乗って道を進むが、太郎冠者は人を使うようになった時の稽古だとして、自分が言われたように主人を叱ると・・・


これも、えらそうに太郎冠者をこきつかう主人に、馬の暴れさせ方や鎮める呪文を聞いた太郎冠者が、主人に逆襲していく主客転倒のようすが可笑しい狂言だね。

馬の馬らしく演じる様子も楽しいよ。


今回の春狂言は、狸・魚・馬と生き物が関わる曲目を並べて、またそれぞれで親子競演されているのが楽しい趣向で良かったよ。

夏の納涼狂言が今から楽しみだよ。