2000年12月の記事


お見合いをするのです
事の起こりはおとといでしたか、職場の上司が、私の以前の職場の隣に住んでいるNさんという人からお見合いのお話がきている、と切り出しまして。
Nさんはそちらに来ていたお客様のYさんから、私の消息を尋ねられたらしいんです。
Nさんは私が9月末に転勤していたことを知っているので、そのNさんを通じて、うちの上司にお話を通したみたいなんですね。
お相手はYさんの息子さんで、私よりも1歳くらい年上らしいです。
少しだけ迷ったのですが、「何事も経験だよ」という上司の言葉もありまして、今朝、私の方からNさんにお返事をしました。
そうしましたら、さっそく夕方上司にNさんから電話があって、できれば今週の土曜日か日曜日頃会いたいと。
ずいぶん早いとは思ったのですが、私はNさんの電話番号を聞いて、うちに帰ったんですね。
ワンピのスペシャルを見て(笑)、食事までのわずかな間に、今度はNさんからうちに直接連絡があって、Yさん(お見合い相手)は私の事を知っているので、2人で勝手に会いなさい、と。
そのあと、Nさんから私の電話番号を聞いたYさんから、直接電話がありました。
どうも、Yさんは、私の事をよく知っているようですね。
出身高校や、それまでの転勤の歴史までも。
(たぶんストーカーしてた訳じゃないとは思いますが……)
でも、私の方は名前を聞いてもまったく誰だか判らなくて。
(客商売をしているくせに、人の顔と名前を覚えるのがすごく苦手なんです)
そう伝えるとYさんはちょっと落胆したように思えましたが、声はなかなか普通だったので、ちょっとお話してみようと思いました。

という訳で、今週土曜日の天皇誕生日、午前10:30よりお見合いに赴きます。
よい人ならいいですね。
なんだか今日は不思議な誕生日になってしまいました。
(あ、私は今日誕生日なんですよ。うちに帰ったら母が赤飯を用意して待っていました)
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久しぶりに日記を書きました。
 実は、昨日から泊りがけで、東京に旅行なんぞに行ってきたんですよね。
 職場のいわゆる社員旅行なんですけど、みんないい人たちばかりなので、かなり楽しい旅行でした。
 メンバーは、50歳近い上司、19歳の後輩、パートさん2名(50台&40台)、私と、別の部署の20代後半の計6人です。(上司以外全員女性;)
 職場にはもう1人、私よりも1歳年上の先輩(♂)がいるのですが、彼は体調不良のために欠席でした。
 電車に乗って、お昼頃全日空ホテルに到着して、バイキング形式の昼食を取ったあとは、全身指圧マッサージ。
 しばらくゆっくり休んだあと、東京駅まで行って、はとバスに乗りました。
 はとバスのお姉さんはとても陽気で、道中すごく楽しかったです。
 レインボーブリッジ付近(笑)を走行したあと、しゃぶしゃぶの食べ放題。
 そして、そのあとはいよいよメインの「ニューハーフショー」です。

 お店にはニューハーフ2人、オカマ2人、女性ダンサー2人、男性ダンサー4人の計10人がいて、約1時間のダンスショーをやってくれるんですよね。
 私たちの席はステージ脇で、正面から見ることはできなかったのですけど、ダンサーを間近で見ることのできるすごく臨場感のある席でした。
  ―― そこで、私は恋に落ちました。
 私は男性ダンサーのKENさんに、恋をしたんです。
 ショーが始まって、KENさんが出てきたとき、彼はひと通り私たちの顔を見つめてにっこり笑ったんですよね。
 みんな同じように(オカマさんもニューハーフさんも)見つめてくれたんですけど、それからの私はもうKENさんに釘付けで。
 ショー全体もちゃんと見てはいたんですが、KENさんがこちらにやってきたときは、もうKENさんばかり見つめていました。
 そうしたら、そのうちKENさんも私の視線に気付いてくれまして。
 私たちの方にやってくるときは、必ず私を見つめてくれるようになりました。
 何かを問い掛けるような視線や、すごく美しい表情で笑ってくれたり、周りで見ていたパートさんも気付くくらいずっと私だけを見つめてくれて。
 手を振ってくれたりウインクしてくれたり、それがもう、すごくキュートで綺麗なんですよ。
 最後には私たちはほとんど視線で会話を交わしていたような感じでした。

 ショーのあと、ダンサーと一緒に写真をとることができたのですけど、生来の引っ込み思案な性格のおかげで、2人だけの写真はお願いすることができませんでした。
 もう2度とお会いすることもないと思いますけれど(再び行ったらぜったい嵌まることは判っているので行けないです;)この短い恋に、すっかり命の洗濯をした黒澤でした。

 そんな訳で、想像力だけはたくましい黒澤は、旅行の間中ずっとKENさんのことを想像して過ごしていたようなしだいです。
 そのうちダンサーのお話でも書きそうな勢いです。
 (たぶん私の実力では書ききれない題材なので書かないと思いますけど)
 うちのサブロウなんかも化粧してダンスをしたら、あんなふうに魅力的な男性になるんでしょうかねえ。
 ちょっとそんなことも想像してしまいました。

 それにしても、視線で人に恋をさせてしまうなんて、ダンサーの人ってすごいですね。
 明日仕事に行ったら、来られなかった先輩に思いっきり自慢してしまおうと思っています。
 (うちの先輩もけっこうハンサムなんですけどね、でもKENさんには負けてました;)
 KENさん、楽しい時間を本当にありがとうございました。

 なんだかニューハーフショーの感想っぽくなくなってしまいました。(笑)
 もちろんニューハーフさんたちも綺麗でしたよ。(女性ダンサーとほとんど区別がつかなかったです)
 もしもまだ観たことがない方は、1度ご覧になってみることをお勧めします。(はとバス万歳!)

 という訳で、久々の黒澤日記でした。
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あとがき・5
 さて、あとがき第5回です。
 今回で最後ですので、許してやってくださいませ。

 今日もお寄せいただいた感想の中から、許可をいただけた3つの感想を公開させていただきます。


 【ハンドルネーム・瑠璃花さん】 ― 一部抜粋 ―

  (略)
  無事、『永遠の一瞬』連載終了、おめでとうございます。
  黒澤さんのアドバイスより(?)、メルマガでいつも読んでいました。
  最後まで読んで、やっと、題名の意味がわかりました。
  私って、鈍いのでしょうか???

  え、もちろん、面白かったですよ。
  『記憶』とはまた、別の感じのお話でしたよね。
  このシーラとサブロウの微妙のコンビがとても気に入りました。
  ちょっと、最後が悲しいというか、寂しいというか・・・・
  そんな印象も受けましたが、終り方自体はかなり気に入ってます。
  (予想と大違いでしたけど。)

  また、次回作も楽しみにしていますので、もし、何か連載する予定が
  ありましたら教えてください。
  速攻、見に行きます。(略)


 瑠璃花さんは現在受験勉強中です。
 どうか最後の追い込みを頑張ってくださいね。p(^-^)q


 【ハンドルネーム・さーゆさん】 ― 全文 ―

  黒澤様
  はじめまして
  最後のあとがきを読んで最後にとっても楽しかったことをお伝えしたく
  ってメールをだします。
  すっかり主人公の気持ちにはまって読みわくわくしながら想像力をはた
  らかせて自分の世界にとりこんでよませていただきました。これから楽
  しみが1つ無くなるかと思うとさみしい気持ちです。
  おもわず涙ぐんで最後の方は読んでしまったのは黒澤様の力量の為せる
  技だったりして。ホントにサブロウのモデルとなった人が死んでしまっ
  たような気がして目から涙がこぼれおちてしまったのは事実です。(そ
  れほど小説の世界に没入していた証拠です)もしほんとに死んじゃって
  いたらどうしようって気をもんでしまいました。モデルとなった人って
  生きていますよね。どんな性格かなーーー。
  やっぱりモチーフは何だったのかな?書いてあったようですがまた教え
  ていただきたいなーー。
  黒澤様はきっと心のあったかい優しい人なんだろうなとひそかに想って
  います。
  どこかであえたらいいですね。
  次の作品を是非教えてください。つぎのモデルはどんなキャラにするの
  かしら。場面設定は次はどこですか?
  内緒で教えてもらえたらいいなっておもっています。
  あしたのあとがき楽しみにしています。もっとあとがきをつづけてかい
  てくださるといいのになー。
  ぜひ次の作品でも力量発揮してください。応援しています。ホントに楽
  しい2か月間をありがとうございました。
  お元気でご活躍ください。才能のある人って素晴らしいですよね。
  さーゆより


 黒澤はどちらかというと「優しくない」人ですよ!(自己チューだし;)
 でも、どこかでお会いできたらいいですね。(う〜ん、でも一発で嫌われそうだ)


 【ハンドルネーム・草薙さん】 ― 一部抜粋 ―

  (略)
  「永遠の一瞬」、毎日楽しみながら読ませていただきました。
  感じたことは、「第1話」と「最終話」の繋がりの良さでした。
  第1話を読み、次の話から夢の話になりますよね。
  どうやって第1話に帰っていくんだろう?と思わせるものでした。
  サブロウの視点から見たタケシとシーラへの想い。
  伏線の張り方、そして解明。
  「さすが」と思わせてもらいました。
  おとわさんの感想にもありますが、タケシとシーラがどう成長したかは
  気になるものですね。
  (略)


 草薙さんはご自身のHPでも毎日連載を始めたくなっているそうです。(メルマガも発行してくれると仲間が増えて嬉しいな)
 なんだか私もだんだん本編を連載したくなってきましたよ。


 瑠璃花さん、さーゆさん、草薙さん、ご感想および掲載を快く承諾してくださいまして、本当にありがとうございました。


 さて、黒澤はまた性懲りもなく毎日連載を始めるつもりでいるのですが、さすがに年内は休養させていただこうと思っています。
 再開は来年になってから、1月にのんびり準備を始めて、新しいIDでまぐまぐさんの許可が下りしだい始めます。
(ということは、連載開始時期は1月下旬か2月上旬頃になるでしょうか)
 今回のお話とはまったく違ったストーリーものになると思います。
 もしもどこかで【毎日連載】の文字と【黒澤弥生】の名前を見つけられましたら、ぜひ読んでやってくださいませ。

 という訳で、今回で「毎日連載小説・永遠の一瞬」は終了です。
 長い間お付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。
 言葉で言い表せないほどの深い感謝を捧げます。


黒澤弥生
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あとがき・4
 さて、あとがき第4回です。
 まだやるか!ってなもんですみません。

 今日はお読みくださった皆様から、いくつかのあたたかいご感想をいただきましたので、その中で許可をいただけた2つの感想を公開させていただきます。


 【ハンドルネーム・take4さん】

  永遠の一瞬、とても楽しくて感動しました。
  最後、シーラがサブロウの妹だったなんてビックリしました。
  この2ヶ月間とても楽しく読ませていただきました。
  毎朝の楽しみがなくなって少し寂しいです。
  また何か連載する時おしえてください。
  それでは、2ヶ月間ありがとうございました。

 take4さんにはその後も何度かメールをいただきまして、すっかりメル友気分にはまってしまった黒澤です。


 【ハンドルネーム・おとわさん】

  (略)今朝のメルマガで最終話を読みました。思わず、茫然自失(汗)
  「永遠の一瞬」というタイトルはこのためだったのか、と改めて唸ったの
  でした。…がーん(涙) 全部サブロウの夢??? しかも、シーラって
  サブロウの妹!? それでサブロウは彼女とつき合わなかったのね…。
  急転直下の結末に狼狽えております、はい。よもや、こんな結末が待って
  いようとは思いもしませんでしたよ。

  (略)メールチェックして、
  ウキウキと昨日の続きを、と読み始めた途端に、頭のなかは真っ白〜。
  サブロウ、あんなにちっちゃなときに死んでいたんですねぇ!?(汗)
  それで第一話があんな形式をとってあったのか…。ラスト近くでサブロウ
  が狙撃されたとき、このまま死んでしまうんじゃないかとハラハラしてい
  ましたけど、それすら黒澤さんの掌の上で踊らされていたのかぁ〜(汗)
  完結してみて初めて解った第一話の伏線…(-_-;) さらに、暗示的に出て
  くるサブロウの狙撃…。うぅ。ここですでに彼の死が宣告されているんで
  すね、この話は。ただのイベントエピソードじゃなくて、サブロウという
  人間の未来を表現するための、モニュメントエピソードだったとは…。
  この展開は読めませんでしたねぇ。なんてすごい結末なんでしょ。そうき
  たか…!というのが正直な感想でしょうか。

  タケシとシーラがこの後、無事に成長できたのかどうかが少し気になると
  ころではありますが、哀しい結末だった割には、ストンと納得できた感じ
  がします。何よりも、幼いサブロウが淡々と自分を見つめている描写が、
  胸を打ちました。…サブロウ、女ったらしなんて言ってご免よぅ(TOT)
  今日一日はサブロウの喪に服して過ごします(涙) ってよりも、何も手
  につかない感じです。(略)

  また新たなお話が連載される日を楽しみにしています〜。(^_^)/~~

 この日、おとわさんのサイトに遊びに行ったら、日記ページで本当に喪に服していらっしゃいました。
 サブロウも草葉の陰でさぞや喜んでいることでしょう。


 take4さん、おとわさん、ご感想および掲載を快く承諾してくださいまして、本当にありがとうございました。
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あとがき・3
 さて、あとがき第3回(;)です。

 このお話の詳細な設定をしたのはなにしろ10年も前なので、ほとんど記憶にないんですが、もっと前に書いた小説の敵側の組織の話として書いたのが始まりです。
 敵の組織も似たようなスパイ組織なのですが、飛行機を落としたり、政治家を操ったり、宗教団体を隠れ蓑にけっこう過激なこともやっています。
 (のちに例のカルト宗教団体の事件が起こって、私は「事実は小説より奇なり」の言葉の意味を深く実感しました;)
 まあ、言うまでもないことですが、この物語はフィクションで、実在の人物組織とはまったく関係ありません。
 たとえ万が一似たようなことをやっている組織があったとしても、私はその存在を知らないので、抗議に来たり最悪処分しに来たりはしないでください(笑)
 また、この小説を読んでその気になって、犯罪行為に手を染めるようなことは絶対にしないでください。(間違いなく捕まります)

 以前いただいたメールの中で、この小説のモチーフというのを訊かれまして、それからずっと考えてるんですよね。
 でも、明確に「これだ!」と言えるようなものはなくて、自分が今まで経験したことや聞いた話から想像力をたくましくして、少しずつ出来上がってきた世界みたいです。
 例のカルト宗教ではないですけど、世の中にはほんと、どんなことでも起こりうる気がしてまして。
 これだけの数の人間が地球上に生息していれば、私が想像したようなことを考える人もけっこう多いでしょうし、その中で小説を書いているのはわりと平和な方で、中には実際にこういうことをしてしまう人もいそうな気がします。
 1人ではできないことが、集団になるとどんどんできてしまう。
 それは人間というもののとてもすばらしいところなんですけど、使い方しだいでものすごい凶器にもなります。
 サブロウたちがしていることは、反モラルではあっても反資本主義ではない。
 日本の根底に資本主義があって、自社の利益のみを追求する企業構造があるかぎり、サブロウたちの組織は現実味を失わない気がします。
 (あ、でも反社会的な犯罪行為であることは間違いないです。警察が資本主義で動いてない限りいつか絶対に捕まります)
 「永遠の一瞬」という小説自体は個人の日常を描いたものなので、書きながらこんな小難しいことを考えてた訳じゃないですけど。
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あとがき・2
 さて、あとがき第2回(笑)です。

 人間は死ぬ直前に、自分の人生の走馬灯を見るといいます。
 今まで生きてきた過程を、死の直前に振り返るんですね。
 ここで見ておけば、閻魔様の前でも口ごもらずにすらすら話せるからなんでしょうか(笑)
 その理由はさておいて、サブロウのように幼くして死んだ場合、人生の走馬灯って、すごく短いものになってしまいますよね。
 そこで私が考えたのが、「子供が見る走馬灯は、もしかしたらこれから生きるはずだった人生なのかもしれない」ということでした。
 私の身近には、幼くして死んだ子供も、不幸にも子供に死なれてしまった親も、たくさんいます。
 もしも彼らが死の直前、自分の未来を見ていたのだとしたら ――
 そんなテーマもこの物語にはありました。

 私は以前、自転車通勤をしていたのですが、その頃よく坂道などで車とすれ違うときヒヤリとしたことがあります。
 実際に事故にあって、転がされてしまったこともあります。
 そんな時よく思ったのが「もしかして私はあのときに死んだんじゃないか」ということでした。
 今、生きていると思ってるのは自分の思い違いで、あの時死んだ自分もどこかに存在するのかもしれない。
 私が死んだ世界では、私が存在しないまま、日常を繰り返している。
 いわゆるパラレルワールドの世界です。

 サブロウが死んだ世界は、「永遠の一瞬」のメインの小説として存在しています。
 でも、サブロウが死ななかった世界も、きっとどこかに存在しているはずです。
 「永遠の一瞬」では、最後にサブロウは自分が死んだ世界に戻ってしまいました。
 だけど、もしもあのまま存在しつづけたら、サブロウはあの世界での寿命が尽きるまで、生き続けることができたのかもしれないんです。
 もしも、タケシがシーラに告白して、2人が恋人同士になっていたら ――

 今、ここに生きている私たちは、自分が死ぬ瞬間に「実は本当の自分はそれより何10年も前に死んでいたのだ」ということを知るのかもしれません。
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あとがき・1
 毎日連載小説「永遠の一瞬」を最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
 2ヶ月以上もの間読みつづけてくださった皆様に、深く御礼申し上げます。
 つたない文章で、誤字脱字、わかりづらい表現等、多々あったと思います。
 この場でまとめてお詫び申し上げます。

 さて、連載の方は無事に終了したのですが、それきりというのもあんまりですので、少しあとがきめいたものでも書いてみようと思います。
 この「永遠の一瞬」という物語は、お察しの通り、別のメインの物語のサイドストーリーとして書かれたものです。
 そもそものメインのお話は、幼い頃にリーダーを亡くしたレヴァンスというチームのメンバー、タケシとシーラの2人が、スターシップには珍しいペアのチームとして活躍してゆくお話でした。
 さまざまな紆余曲折をはさみながら、やがて「サブロウ」を殺した「敵」と、その背景にある「謎」を追及してゆきます。
 その物語の中では、サブロウはたった1枚の写真の中にしか存在しない、既に過去の人です。
 6歳の頃、自分たちをかばって銃弾に倒れた勇気ある英雄として、2人の記憶に残っています。
 私がこの物語を書いたのは10年も前になりますが、この10年間、私の中でサブロウはずっとうずき続けていまして。
 ことあるごとに思い出しては、大人になったサブロウを想像して、頭の中でシーラと絡ませたりしていました。
 そんなことをしているうちに、私はだんだん思うようになっていったんです。
 「大人になったサブロウのお話を書きたいよぉ〜!」と。
 だけど、サブロウは享年6歳で死んじゃってるんですよね。
 サブロウの死はメインの物語の一番重要なところですから、この設定自体を動かすことなんかできません。
 でも、「サブロウが生きてたらシーラはきっと甘ったれだったよな」とか、「サブロウが生きてたらシーラはぜったいサブロウに惚れてたよな」とか、「サブロウが生きてたら2人ともこんなに有能じゃなかったよな」とか、想像ばかりどんどん膨らんでしまって、私の中で2つのパラレルワールドは、ほとんど同等の比重を占めるほどになってしまったんです。
  ―― もしもサブロウが生きていたら ――
 これが、「永遠の一瞬」という物語の、本当のテーマなんです。
 って、そんなこと言ったって、この物語を読んでくださった方々にはまったく判らないものなんですけど。

 短編としての「永遠の一瞬」は、間違っても完成度の高い小説とはいえないです。
 でも、私にとってはすごく印象深い、楽しい作品でした。
 読んでくださった方の心の中にも、少しの感動が残ったのでしたら嬉しいです。
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永遠の一瞬・66/最終回
 ぼくは、ゆめをみた。
 おとなになった、タケシと、おとなになった、シーラをみた。
 おとなのシーラは、とってもきれいな、かわいいおんなのこだった。
 すごくながくて、すごくたのしくて、すごくしあわせな、ゆめだった。


 ひかりが、とてもまぶしくて、めをあけたら、シーラがみえた。
 シーラは、ぼくをみて、ふるえてた。
 シーラのとなりで、タケシも、ふるえてた。
 だいじょうぶだ、って、ぼくはふたりを、だきしめた。

 きかんじゅうの、おとがうるさくて、せんせいと、おともだちの、こえもきこえた。
 でも、こえはすぐに、きこえなくなった。
 きかんじゅうの、おとは、まだきこえる。
 まだ、うるさいくらい、きこえる。

 シーラ、うごかないで。
 シーラの、みみもとで、ぼくはいった。
 ぼくが、いいっていうまで、うごかないで。

 きゅうに、うでが、いたくなった。
 きかんじゅうが、ぼくに、あたったみたいだ。
 だけど、シーラがみてるから、いたいかおはしない。
 シーラ、おねがいだから、うごかないで。

 シーラと、タケシを、だきしめる。
 せなかに、なにかがあたって、あつくなった。
 しゃべろうとしたら、くちのなかに、あついものが、たまってきた。
 ぼくは、もう、しゃべれないみたいだ。


 シーラ、だいすきだよ。
 こえにださないで、ぼくはいった。
 いっしょにいられて、すごく、たのしかった。
 もっともっと、いっしょに、いたかったよ。

 タケシ、おねがい、シーラをまもって。
 シーラを……ぼくの、いもうとを、まもってね。
 ぼくはもう、おとなに、なれないから。



 だれだかわからない、かみさま。
 ぼくを、おとなにしてくれて、ありがとう。
 ながくて、みじかい、ゆめをありがとう。
 どうか、シーラが、しあわせになれますように。

 シーラに、しあわせを、ください。

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永遠の一瞬・65
 オレはずっと、シーラを泣かせ続けてきたような気がする。

「少しは落ち着いた?」
 だいぶ泣き声が穏やかになってきたから、オレは訊いてみた。シーラはちょっとぶうたれたみたいにオレの胸を叩いたりしてる。初恋の相手としては、オレはあんまりふさわしくはなかっただろうな。シーラも趣味が悪いよ。世の中にはシーラに似合いのいい男だって、たくさんいるだろうに。
「シーラ、傷に響いてるんだけど」
「……あたしをフッた罰だもん」
「オレが悪いのか?」
「あたしが悪いんじゃないんだからサブロウが悪いんだもん」
 ああ、そうだな。シーラはぜんぜん悪くない。だったら悪いのはオレだ。オレはいつでもシーラを悲しませてた。
「……どうしてだよ。サブロウは他の女の子にはすごく優しいじゃない。誰も断わったりしたことないじゃない」
「ひょっとして、断わられると思ってなかったのか?」
「付き合ってもくれないなんて思わなかった。……なんで? どうしてあたしだけみんなと違うの?」
 そんなこと言われてもな。どっちかっていうとオレの方が訊きたいよ。なんでシーラにはオレだったんだろ。あれだけ意地悪して、泣かせて、そんな奴に恋してもぜんぜん楽しくなかっただろうに。
 オレが答えなかったからか、しばらくシーラはじっと考えてるみたいだった。そしてやがて、顔を上げてそう言ったんだ。
「ねえ、告白した記念に、キスしてもいい?」
 あのなあ!
「ダーメ! ……どこをどう代入したらそういう答えになる訳?」
「思い出に1回だけ抱いてくれるとか」
「ぜーったいイヤだ!! たとえ明日世界が終わるとしてもお前を抱くのだけは嫌だ!」
「……なんでそんな言い方するんだよ……」
 悪かったよ。だけどオレはシーラに優しくなんかできない。シーラはオレにとって、他のどうでもいい女とは違うから ――
  ―― シーラ、意地悪してごめんね。恋人になってあげられなくてごめんね。君の理想の、優しくてかっこよくて、わがままなんでも聞いてくれるような男になれなくて、ごめんね。
 だけどオレは、世界で1番、シーラのことが好きだよ。
 君に出会えて、ずっと傍にいられて、オレは本当に嬉しかったんだ。

 やがて、シーラは動きを止めて、光と色を失った。
 まるで砂でできた人形のように、音も立てずに、崩れてゆく。
 オレが今まで見ていた風景も、少しずつ崩れて、消えていった。
 オレ自身も消えて、あたりは暗闇に包まれた。

 そして、一瞬のうちに、視界はまぶしい光に包まれていた。
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永遠の一瞬・64
 告白した直後のシーラは目をまん丸に開いて、呼吸さえ止まってる感じだ。たぶん、オレの一言を待ってるんだろう。オレは大きく息を吐いて、緊張感をほぐそうとした。だけどダメだ。オレの緊張はほぐれたけど、シーラの緊張をほぐすところまではいかない。
「……なんだかそんな科白を言われそうな予感はしたんだよな。……で? 今は違うの?」
 シーラは一瞬何を言われたのか判らなかったらしい。だけどすぐに、自分が過去形を使ったことと、オレが判っててシーラをからかおうとしてることを悟ったみたいだ。ちょっと怒ったように口を尖らせた。
「なんでいつもそうなんだよ! ひとが真面目に告白してんのに!!」
 それもこれもひとえにオレのキャラクターなんだよな。どうもシーラに対して真面目に振舞うのって苦手で。
「判った判った。……で、答え、聞きたい?」
 オレがうって変わってシーラを覗き込むようにしたから、シーラはまた息を飲む。ちょっとためらうように視線を泳がせたけど、やがて、首を1回上下に振った。
 オレも、少しだけ言葉に迷った。
「 ―― ごめんね」
 そう、オレが言った瞬間は、シーラの表情はそれほど動かなかった。
 たぶん、言われた言葉を飲み込むのに、かなり時間がかかったんだと思う。オレは残った左手でシーラの頭をなでて、感情がスムーズに流れるように手伝った。だんだん飲み込めてきたんだろう。目を伏せて、唇を歪ませた。
「シーラ、泣かない」
 オレの言葉でようやく泣くことを思い出したのか。シーラは小さな嗚咽を漏らして泣き出した。かわいいと思う。独りで泣かせておくのがかわいそうで、オレはシーラを引き寄せて、胸を貸した。
 遠慮がちにオレの胸に取り付いて、シーラはしばらく泣いた。シーラが泣くのはこれで最後だ。なんか、オレはずっとシーラを泣かせ続けてきたような気がする。
「……どうして……?」
 小さな声は直接胸に響いた。
「ごめんね」
「なんで? どうしてあたしじゃダメなの?」
「……ごめんね」
「それじゃ判んないよ」
 ……だよな。判ってたけど、オレはバカみたいに同じ言葉を繰り返してた。
「あたしが子供だからダメなの?」
 そんなの、子供はすぐに大人になるもんだ。別にそんな理由で謝ったりしないよ。
「それとも……あたしがヴァージンだから?」
 ……そういう理由で断わる男はあんまいないと思うけど。
「ごめんね」
 オレが何も言えないことを、どう解釈したのか、それは判らない。
 オレの胸に取り付いたまま、シーラは盛大に泣き声を上げた。
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永遠の一瞬・63
 シーラと同じチームになりたいって思ったあの頃は、まさかこんなことになるなんて思ってもみなかった。一緒にいたらたぶん楽しくて、何かあったら助けてあげられる。ずっとずっと楽しく過ごしていられる。子供だったオレは、ただそれだけを思ってた。
 シーラの気持ちに気付いたのって、いつだったんだろ。高校に入る前くらいかな。少なからずオレはショックで、しばらくシーラを遠ざけて、他の女と遊びまくってた。そうすることでシーラに嫌われるならその方がマシだったんだよな。タケシがシーラを好きなのは知ってたし、タケシがシーラにふさわしい男だって、オレは判ってたから。
「シーラ、少し状況を教えて。今はいつなんだ?」
 シーラはずっと気持ちを隠してる。だけど視線はすべてを告白してる。オレじゃなくたって判るよ。
「うん、今は日曜日の2時半だよ。サブロウ、12時間以上寝っぱなしだった」
 じっとオレを見てる。
「シーラは? 少しは寝たのか?」
 オレは視線に耐えられなくて、必死で言葉を探してる。今の状況が恐ろしいから。シーラがその言葉を口にしそうだから。
「眠れないよ。サブロウが苦しんでるのに眠れる訳ないじゃない」
 タケシ、早く戻ってきてくれよ。
「だったら少し寝なさいよ。オレはもう大丈夫だから」
 じっと、見ている。
「……お願いだからあたしを邪魔にしないでよ。……あたし、あたしね……」
  ―― たぶん、シーラをはぐらかす方法はあったと思う。
 オレはその手の話術はひと通り習得して、更に磨きをかけてもいたし、シーラの思考パターンはわりと読みやすいから、今までは楽にはぐらかしてきた。この状況をどうにかするくらいのこと、オレにはできる。シーラを操ることくらい、オレには簡単なんだ。
 だけど ―― どうしてだろう。オレはこのとき、シーラの言葉をさえぎることが出来なかった。
 ずっと気持ちを隠してきたシーラ。訳もなくオレに避けられて、はぐらかされて、邪魔にされてきたシーラ。この子は、オレが他の女と遊びまくるのを、いったいどんな気持ちで見てきたんだろう。独りで泣いたりしたのかもしれない。オレの気を引くためにタケシと仲良くして見せたりしたのかもしれない。
 シーラが健気で、愛しくて、かわいそうだった。これ以上傷つくシーラを見たくなかった。シーラが幻だって、オレは知ってる。それを言わせてしまえばオレがシーラの傍にいられなくなることも。
 だけど、たとえそうでも、オレはこれ以上シーラを苦しめたくなかったんだ。 ―― もういい。この13年間は、オレにはすごく楽しかったから。
「あたし、ね」
 オレは表情を緩めて、シーラがその言葉を言いやすいように僅かに微笑んだ。
 泣きはらしたシーラもすごく綺麗だ。
「……あたし、ずっと、サブロウのことが好きだった。……ずっと、小さいときからずっと」
 オレは、時を刻む砂時計の砂が、すべて落ち切った瞬間を感じた。
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永遠の一瞬・62
「タケシ」
 シーラの頭越しにタケシに手を伸ばすと、言いたいことが判ったのか、背中に枕を当てて少し上半身を起こしてくれた。腕の痛みは感じてるけど、意識を逸らしてれば耐えられないほどじゃない。利き腕だから、反射的に使おうとしそうで、それがちょっと怖いか。シーラが左側にいてくれてよかった。おかげで頭をなでることが出来る。
「ええっと、状況はどうなってるんだ? オレが車の中で眠っちまって、そのあとどうなった? ホテル側に疑われるようなことは?」
「覚えてねえのか?」
 タケシはちょっと目を見開くようにして、やがてため息をついて言った。
「お前、駐車場からフロント脇のエレベーターまで、自力で歩いたんだぜ。だからホテルにはぜんぜん疑われてねえよ」
「そうなの?」
「ああ。エレベーターの中でぶっ倒れたんだ。……ったく、たいした精神力だよ、お前は」
 よくもまあ、あの状況で自力で歩けたもんだ。自分のことながら信じられないな。さては狐でも憑依してたか。
「それで?」
「今朝のうちに機材は車ごと本部に返してきた。これからオレはホテルをチェックアウトしてシーラの車を取ってくる」
「悪いね、オレが動けなくて。まだ運転は出来そうにないわ」
「さっきまで死にかけてた奴はおとなしく寝てろ」
 ハイハイ、判りましたよ。……心配かけたんだろうな。タケシは何も言わないけど、ほんとは訊きたくてうずうずしてるんだろうな。オレがどうしてこういうことになったのか。本部がなぜ盗聴器を仕掛けて、オレが誰に毒矢で狙われたのか。
 だけど訊かないでいてくれる。ほんと、ありがたい男だよ、お前は。
「シーラを連れてけよ。幸いオレの方は心配ないみたいだし」
 車を2台も取りに行くんだからな。1人じゃ何往復もしなくちゃならない。
「午前中に一度行ってお前の車は取ってきてある。あと一台くらいなんてことはねえよ。……じゃ、行ってくる」
「判った。よろしくね」
「行ってらっしゃい、タケシ。……ごめんね」
 ずっと泣き続けてたシーラも、ようやく顔を上げてタケシを見送った。軽く片手を上げてタケシが部屋を出てしまうと、シーラは振り返ってオレを見上げる。
 シーラの視線は、いつもオレが恐れていた、あの表情をしていた。
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永遠の一瞬・61
 その部屋の扉は、いつも閉ざされていた。
 白い廊下の突き当たりにある白いドア。扉には赤い文字が書いてあって、読むことは出来ない。「関係者以外立入禁止」 ―― そうか、ここはあの場所だ。まだ4歳だったオレが、入ってみたくてしかたがなかった秘密の扉。
 子供の身体はその小さな隙間を通ることが出来た。ドキドキしながら中に入ると、たくさんの書類といくつかのパソコン。扱い方はちょっと前の授業で習ったばかりだった。スイッチを入れて、どこをどうしたのか。入力画面に自分の名前を打ち込んでみた。
 その時出てきた画面を、オレはすべて記憶したんだ。読めない漢字も映像として記憶した。どうしてそんなことが出来たんだろう。オレは部屋を元に戻して、自分の部屋に戻って、覚えたそれを全部紙に書き出した。
 誰も起きてない真夜中に、秘密の紙を広げて、辞書を見ながら漢字にふりがなを振った。それでも判らない言葉はたくさんあった。その時オレに理解できたのは、たったひとつだけ。紙は小さく切り刻んでトイレに流した。
  ―― シーラと同じチームになりたかった。
 シーラはひとつ年下だったから、本当ならぜったい同じチームにはなれないはずだった。だけどオレはどうしてもシーラと同じチームに入りたくて、つたない言葉で必死に駄々をこねた。それが悪かったのかもな。オレの学年は1年遅れて、シーラと同じチームになることは出来たけど、それからしばらくしてオレは狙われ始めたから。
 これで最後か。オレは殺されて、いなかったことになる。シーラのために何も出来ないまま ――
  ―― ダメだ! まだ消える訳にはいかない!
 オレはまだシーラが幸せになるところを見てない。まだ足りない。13年ぽっちじゃ、ぜんぜん足りないんだ。
「う……いってぇ……!」
「タケシ! サブロウが……!」
 オレが引き戻されて最初に聞いたのは、シーラのその声だった。身体がズキズキ痛んで意識がはっきりしない。そのままかなり長い時間、自然に目が開くのを待った。オレの寝起きが悪いのはシーラもタケシも知ってるから、そうやってオレが努力してる間も、じっと黙って待っててくれた。
 やがて目を開けると、目の前にはシーラの涙ぐんだ顔。その前にもそうとう泣いてたなこれは。真っ赤に腫れて、すっかり容貌が変わってる。
「サブロウ……、目が覚めたの?」
 ちゃんと声が出せるかな。軽く咳払いをして、出来るだけ普通の声になるよう気をつけながら、オレは言った。
「目の前に女神がいるってことは、ここは天国?」
 オレの言葉に、シーラはふっと笑顔を見せた。
「タケシ、サブロウが復活した」
「ああ、……らしいな」
「ほんとによかったよぉ……」
 シーラは大粒の涙をこぼして、オレが寝ているベッドに突っ伏すように泣き崩れた。
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