あとがき・2
 さて、あとがき第2回(笑)です。

 人間は死ぬ直前に、自分の人生の走馬灯を見るといいます。
 今まで生きてきた過程を、死の直前に振り返るんですね。
 ここで見ておけば、閻魔様の前でも口ごもらずにすらすら話せるからなんでしょうか(笑)
 その理由はさておいて、サブロウのように幼くして死んだ場合、人生の走馬灯って、すごく短いものになってしまいますよね。
 そこで私が考えたのが、「子供が見る走馬灯は、もしかしたらこれから生きるはずだった人生なのかもしれない」ということでした。
 私の身近には、幼くして死んだ子供も、不幸にも子供に死なれてしまった親も、たくさんいます。
 もしも彼らが死の直前、自分の未来を見ていたのだとしたら ――
 そんなテーマもこの物語にはありました。

 私は以前、自転車通勤をしていたのですが、その頃よく坂道などで車とすれ違うときヒヤリとしたことがあります。
 実際に事故にあって、転がされてしまったこともあります。
 そんな時よく思ったのが「もしかして私はあのときに死んだんじゃないか」ということでした。
 今、生きていると思ってるのは自分の思い違いで、あの時死んだ自分もどこかに存在するのかもしれない。
 私が死んだ世界では、私が存在しないまま、日常を繰り返している。
 いわゆるパラレルワールドの世界です。

 サブロウが死んだ世界は、「永遠の一瞬」のメインの小説として存在しています。
 でも、サブロウが死ななかった世界も、きっとどこかに存在しているはずです。
 「永遠の一瞬」では、最後にサブロウは自分が死んだ世界に戻ってしまいました。
 だけど、もしもあのまま存在しつづけたら、サブロウはあの世界での寿命が尽きるまで、生き続けることができたのかもしれないんです。
 もしも、タケシがシーラに告白して、2人が恋人同士になっていたら ――

 今、ここに生きている私たちは、自分が死ぬ瞬間に「実は本当の自分はそれより何10年も前に死んでいたのだ」ということを知るのかもしれません。