覚醒の森4
 翌日、ルイがどこかへ電話をしてしばらくしたあと、2人の女の人がルイの部屋にやってきた。この2人も顔や手に血管が見える。そういえば昨日見せてもらったルイの昔の写真には見えなかった。もしかしたら、僕の血管が見えないのは僕が子供だからなのかもしれない。
 ルイが2人に僕を紹介すると、2人は耳障りな高い声を上げて僕に近づいてきた。
「キャー! かわいー! ねえ、この子ほんとに男の子なのぉ? ぜんぜん美少女じゃないよぉ」
「ああ。昨日この目で確かめたからな、間違いねえよ」
「なにそれぇ! ルイ、まさかこの子が美少年だからって、なにかよからぬことでもしたんじゃないでしょうねぇ」
「するか! 男だぞこいつは! ……そんなことより着替え、持ってきたのか?」
「持ってきたよぉ。でもこんなに美少年なの判ってたら弟の古着なんか借りてこなかったよ。ねえ、着替え終わったらさ、この子ブティックにつれてっていい? もちろんルイが激貧なのは知ってるからお金はあたしが出すし」
「……好きにしろよ。じゃ、大河、しばらくこいつらのおもちゃになっててくれ。オレは交番行ってくるから」
 僕が答えるまもなくルイは部屋を出て行ってしまった。残った2人はすぐに僕の服を脱がせて着替えさせたあと、アパートの前に止めてあった車で僕を駅前の繁華街へと連れ出したんだ。
 その日1日、僕はルイが言ったとおり、この2人のおもちゃになっていた。あたりが暗くなった頃にようやくルイのアパートで解放されて、2人は荷物を置いて帰っていった。僕は最初の店の試着室で買った服に着替えていたのだけど、そんな僕を見てルイが溜息をついた。
「ちょっと見ボーイッシュな美少女だな、それじゃ。……おまえもおまえだ。嫌なら嫌だって言えよ」
 今僕が着ているのは、ごく普通のショートパンツとポロシャツだ。だからルイがどうしてそんなことを言うのかが判らなかった。
「着心地は悪くないよ。……下着の前があいてないからちょっとトイレで困るくらいで」
「馬鹿野郎! おまえの服、ぜんぶ女モノだ! 男が婦人服売り場になんか平気でついていくんじゃない! ……前があいてないって、これから誰が洗濯すると思ってんだあいつら ―― 」
 ルイはめまいがした時のように頭を抑えて、パタッとその場に寝転がってしまった。