桜色迷宮41
 その後、再び食堂に集まって美幸会長の進行で始められた発表会では、3組は残念ながら選に漏れてしまった。美幸先輩の人気票は入ったのだけど、なにしろ小池先輩が率いる6組がものすごく面白かったんだ。この6組は文化祭で再結成されて同じステージを披露することになる。そのあとの自由時間に裏方役員同士で集まったとき、小池先輩は「また自分で自分を忙しくしちまったぜ」と自分のあふれる才能を大げさに嘆いてあたしたちの笑いを誘っていた。
 夕食が終わるとクラスごとに順番にお風呂に入って、自由時間のあと消灯が11時なのだけど、あたしがお風呂から出た頃に一枝先輩が呼びに来たんだ。
「2号室の皆さーん、今、卒業生の先輩方が差し入れを持って激励に来ましたー。6号室で宴会が始まりますので、よろしかったら参加してくださーい ―― 」
 続けて一枝先輩は激励に来てくれた3人の先輩たちの名前を言ったあと、「一二三ちゃんはご指名だから強制参加ね」と言ってあたしを連れ出してしまった。名前を聞いただけでは思い出せなかったのだけど、6号室に揃った面々の顔を見てすぐに、去年卒業した元生徒会長と、毎年合宿に顔を出しているOBの先輩たちなんだって判った。
「 ―― あ、来た来た、小さい子。こっちこっち、ここへ座りな」
 導かれて座った場所は2人のOBの間で、毎年合宿に参加していたあたしを毎年律儀にからかってくれた先輩たちだった。
「どうした? 高校に来て少しは育ったか? 小さい子」
「背は少ーし伸びたかな。だけどちゃんと食ってるのか? こんなに細っこいとカレシもできねえぞ」
 先輩たちに相槌を打ちながら周りを見回すと、生徒会の役員では美幸先輩と朱音先輩がいないほかはみんな揃っていた。朱音先輩は時間的にたぶんお風呂に入っているのだろう。ほかに松田君と中学部の4人、それに3年生の人たちが何人かいて、久しぶりに会う先輩たちと近況を報告し合っていた。
 あたしは先輩たちの会話を聞いているだけで、それでもけっこう楽しかった。いつもは最上級生の会長たちも、このときだけは後輩に戻ってしまうから。そうしてしばらくした頃、ようやく美幸先輩がやってきて、あたしと目が合った瞬間に一瞬だけ表情を曇らせた。