桜色迷宮37
 そうこうしているうちに一般の参加者が集合してきて、あたしと松田君も席順配りに忙しくなった。一般の人たちはここで初めて自分のクラスを知ることになるから、席順表を見て一喜一憂している。今回あたしと美幸先輩がいる3組は3年女子と2年男子、それに1年女子の組み合わせだったから2年の女子は不満だったみたい。あたしも少しだけ言われたけど、中には直接会長に文句を言いに行った人たちも何人かいたようだった。
 そんなちょっとしたトラブルはあったものの、遅れてくる何人かを除いてほぼ全員が食堂の席に着いたあと、まずは会長が前に立って2泊3日の合宿が始まった。
「エー、今回は生徒会主催の夏季合宿に参加してくれてありがとうございます。参加者全員、ルールを守って、楽しい3日間にしていきましょう。まずは合宿所を使用するに当たっての注意事項から説明します。しおりの最初のページを開いてください ―― 」
 そうして会長がひと通りの説明を終えたあと、この合宿の最初のイベント、生徒会役員選挙が始まった。でも、いつもそうなんだけど、一般の人はなかなか会長に立候補してくれないんだ。しばらく待っても立候補がなかったので、司会進行役の会長が痺れを切らした。
「それじゃ、こっちから指名しちゃうかな。……松田君、どう? 生徒会長やってみない?」
「え? オレがですか? ……オレ、まだ1年だし、せめて副会長くらいにしてくださいよ」
「それじゃ松田君は副会長候補ってことで。会長は、……ミユキちゃん。君はどう?」
 あたしは隣に座った美幸先輩を振り仰いだ。美幸先輩は苦笑いを浮かべてその場で立ち上がって言う。
「いいんですか? 僕は一応生徒会の役員ですけど。今回役員は裏方だって決まりですよね」
「この際だからかまわないよ。それに会計監査は役員選挙通ってないしね。強引に解釈すれば決まりには触れないってことで」
「……判りました。そういうことなら立候補しますよ。生徒会長、やります」
 美幸先輩がそう言ってから、あとは驚くほどスムーズに進んだ。先輩が会長をやるなら自分も、っていう女子が次々に役員に立候補して、あっという間に役員全員が決まってしまったから。
 美幸先輩が会長就任の挨拶をして、そこから先は司会進行が河合会長から美幸先輩にバトンタッチして続けられた。