桜色迷宮36
 合宿のクラス分けで、あたしと美幸先輩は同じ3組になった。裏方で忙しい会長と熊野副会長にはそれぞれ松田君と一枝先輩が付いていて、そのほかの役員は1人ずつ別のクラスに分けられたから、あたしと美幸先輩はどうやら2人で1人前の扱いになってるみたい。小池先輩は憧れの里子先輩と同じクラスになれたみたいで、「これもワイロの成果だ!」って叫んで自分から不正をばらしてしまっていた。あたし自身は、中学で同じクラスになったことがある女子のグループと一緒になれて、そのほかの人たちともほとんど顔見知りだったから、ほっとしたと同時に会長の心遣いを嬉しく思った。
 そうして迎えた合宿初日、一般の集合時刻よりも1時間早く集まったあたしたちは、荷物をチェックしたあと集合場所である食堂のセッティングをした。一緒に裏方に参加してくれる松田君はバレー部の1年生で、後期からあたしと同じ会計監査に任命される予定になっている。中学の頃には同じ学年の生徒会長として一緒に仕事をしたから気心は知れている人だ。少し見ない間に身長が伸びてしまったから、最初に隣に立ったときにはちょっとだけドキッとしたけど。
「よっ、久しぶり。元気してた? 夏バテしてない?」
「……うん、大丈夫。松田君も元気そう」
「そりゃオレは鍛えてるし。……そろそろ集まり始める頃だから、これ、オレとおまえとで配るようにってさ、会長が。半分持ってて」
 松田君が渡してくれたのは食堂の席順表で、6つのテーブルにクラスごとに分かれて座るようになっている。一般の集合時刻まではまだ20分近くあったから、あたしたちはみんなが来るまで食堂入口近くの椅子に座ってたわいない話をしていた。
「 ―― そういえばさ、山崎先輩って、こないだの球技大会でバスケとバレーと両方出てなかった?」
「うん。なんかクラスの友達に頼まれたとか言ってた。バレーの方は友達の代役だったんだって」
「うちの部長がその試合を見てさ、おまえのカオでぜひあの人材をバレー部に引っ張ってこい!って言うんだよ。部長が頼んでダメだったんだから無理だって言ったんだけどね、最悪試合の時だけの助っ人でもいいからって。そういうの、山崎先輩引き受けてくれそうかな」
 あたしはあいまいに首を傾げただけだったけど、なんとなく複雑な気分だった。河合会長が美幸先輩を次の生徒会長にさせたがっているのは知っていたし、あたし自身も先輩が生徒会からいなくなってしまうのはやっぱりさびしかったから。