桜色迷宮27
「 ―― 合宿中はクラス単位で行動することになるんです。中でミニ生徒会役員やクラス委員を決めて、その人が中心になって、文化祭の生徒会の出し物を決めたりするんです」
 生徒会室の楽しさを引き継いでいた帰り道、美幸先輩と歩きながら、あたしは夏の合宿について知っている限りのことを話していた。
「一二三ちゃんは合宿に参加したことはあるの?」
「はい。あの、中学のときに。毎年参加だけはしています。生徒会長になったこととかはないですけど」
「生徒会長には誰でもなれるの?」
「はい。1番最初に立候補とかして、会長副会長書記会計ぜんぶ決めるんです。開校式のときに選挙をして、そのあとクラスに分かれて学級委員とか生活委員とか、ごみ捨て係会計係、それからほかにもいろんな係を決めて、委員会が開かれます。そうだ。お食事係とか時計係とか、点呼係とか、クラス全員がかならず1つ係を担当するんです」
「おもしろいな。……会長にワイロを持っていけば、一二三ちゃんとおんなじクラスになれるだろうか」
「美幸先輩は生徒会役員だから、判らないです。6クラスもあるんだし」
「いや、交渉次第だな。一二三ちゃんは1年生だし、僕は新米役員だしね。……話は変わるけど、今日の午後は暇?」
 とつぜんの展開に、あたしは少し驚いていた。
「……とくに予定はないですけど」
「一二三ちゃんともっと落ち着いて話がしたいんだ。帰りの10分だけじゃたりない。もっとたくさん、話したいことがたくさんあるんだ」
「なんですか? 話したいことって」
「判らない。ただ、もっとゆっくり顔を見て、歩きながらじゃなくて、座って向かいあって。喫茶店でもいいし、一二三ちゃんのうちでも、僕のうちでもいいんだけど」
 あたしはちょっと戸惑ってしまって、その場では「お母さんに訊いてみないと」と言って答えを避けた。でも、先輩はお母さんにすごくスマートな態度で交渉して、けっきょく我が家で昼食まで食べていくことになったんだ。