桜色迷宮26
 美幸先輩にはこの合宿の話はまったく理解できないものだったのだろう。気づいた会長が説明を始めた。
「ねえミユキちゃん、ミユキちゃんが来る前、生徒会役員は7人だっただろう? 来期から会計監査に任命する予定の松田っていう1年生が加わって8人になると、1クラス役員2人で4クラスっていう理想的なクラス編成が出来る予定だったんだ。ところが6クラスになると、1クラス役員が1人で多くて2人。どうやっても目が届きにくくなるだろ。ただでさえ人数が多すぎて大変だっていうのにね」
「それなら最初に人数制限する訳にいかなかったんですか? 40人そろったところで応募を打ち切れば」
「出来れば苦労はしないよ。例年だとね、ミユキちゃん。オレたち生徒会役員は、何とかして最低線の40人を集めようと必死になっていたんだ。生徒会の中に活気があっても、一般の生徒は生徒会に何の関心も払わない。オレ達生徒会役員は世襲制で、なかなかほかの生徒が入ってこられるような場所じゃなかったんだ。もちろんオレ達に反省点はあるとは思っているし、努力もしているつもりだけど。それがさ、生徒会室の前にポスター貼っただけで、50人以上があっという間に集まっちゃったんだ。これだけ生徒の関心を集めた生徒会っていうのは学校始まって以来なんだよ。断れる訳がないだろう? だからなんとしてでも合宿は成功させないといけないんだ」
 会長の言葉は静かではあったけど、なにか緊迫したものを聞いているあたし達に感じさせた。あたしも生徒会の役員の1人なんだ。尊敬する河合会長の役に立つ働きをしなくちゃいけない。
「判りました。僕には何の力もないけど、出来るかぎりの協力をします。会長、6クラスで何とかしてみましょう。クラス編成は誰がしているんですか?」
「いつもはほとんど役員の一存でやってたけど、去年は小池がわがままを言ったからな。小池抜きで決める事にしようか」
「そりゃないぜ会長。せめて里子先輩と同じクラスにしてくれなきゃ。そのくらいの特典がなけりゃ、生徒会役員なんてやってられねーぜ」
「それは言えるな。という訳だから、クラスが決まるまで、生徒会長に媚びでも何でも売ってくれ。ワイロも大歓迎だ。そのくらいの特典がなきゃ、生徒会長なんてやってられないんでね」
「……嗚呼、またはめられちまった」
 小池先輩が再び脱力して机に突っ伏したから、その仕草にまたみんなが笑いを誘われていた。