桜色迷宮7
 今日の予定の仕事を何とか6時までに終わらせて、会長が終了宣言をしたあと、あたしは荷物をまとめてみんなに続いて生徒会室を出た。山崎先輩はずっと手伝ってくれていて、あたしはほとんど話をしなかったのだけど、一枝先輩とはずいぶん仲良くなっていたみたいだった。
「ミユキちゃん、家はどこ?」
 会長に訊かれて、山崎先輩はもうすっかりその呼び名に慣れたようで、にこやかに答えていた。
「生鮮市場の近所です。市役所の先の」
「そうか。それだったら一二三ちゃんちが通り道だな。送ってってくれる?」
「はい、いいです」
 そんな会長と山崎先輩の話を聞き付けて、一枝先輩も会話に加わる。
「それだったらあたしも一緒に帰るわ。そうすれば会長が遠まわりしなくてもいいでしょ?」
「そうだな。それじゃミユキちゃん、2人まとめて頼むよ。オレも熊野もちょっと方角が違うから」
「判りました。あんまり腕っ節に自信はないけど、一枝ちゃんなんか僕より強そうだし、大丈夫でしょう」
「ちょっとミユキちゃん! それはないでしょう」
「ははは……すっかり見抜かれてやんの」
 山崎先輩はもうみんなに溶け込んでしまったみたい。きっと山崎先輩はこの生徒会の人たちと同じような人種なんだろう。明るくて、物怖じしなくて、ここではあたしの方が異質なんだ。いつもは先輩たちが気を遣ってくれてそんなことは感じないのだけど、ふとした瞬間にあたしは自分がものすごくちっぽけに感じて、いたたまれなくなることがある。
「それじゃ、また明日」
「おつかれさまでした」
 朱音先輩はいつもと同じように小池副会長に送られて帰っていった。会長は西村先輩を伴って、熊野先輩は1人で、それぞれ散っていってしまうと、山崎先輩と一枝先輩、それにあたしの3人が残った。