あとがき
 このお話は、今から10年以上前に書いた「桜色迷宮(仮題)」というお話をベースに、まったく新しい設定を加えて書き始めた物語の第1作目です。
 今作「満月のルビー」での主人公(語り部)は羽佐間君なんですけど、実は「桜色~」での主役は山崎先輩(ヨシユキ)でして。
 彼が山崎さん(ヒフミ)が通う高校に転校してくるところから始まるお話だったんですね。
 そんな訳で、作者に名前すらつけてもらえなかった羽佐間君は、この第1作目で消える運命の主人公だったりします(笑)

 最近の黒澤は一人称を主体に物語を書いているので、7月初め頃にこのお話をリメイクしようと思ったとき「さて、いったい誰を主人公で書こうかしら?」とちょっと悩みまして。
 設定全体を把握しているのはヨシユキなんですけど、彼はこの時点ではかなり達観した人物なので、一人称の主人公にはあまり向いていないんですよ。
(一人称の主人公は「一般的に共感しやすい悩みを持った成長型キャラ」が書きやすいです。ヨシユキにも悩みはありますが、彼の悩みはかなり共感しづらいので・笑)
 性格的に1番向いているのがヒフミだったんですが、困ったことにこの子は「超がつく美少女」だったりするんですよね~。
 美少女で、しかも自分の容姿にコンプレックスを抱いているタイプの子だと、一人称にした場合にこの「突出した容姿」がまったく伝わらなくなる可能性がありまして。
(だって自分の説明をするときに「あたしは人によく美少女といわれて」なんて書いてあるとめちゃくちゃ嫌味だし・爆)
 それにヒフミ1人で物語を語らせるのもかなり無理があったので、「よし、思い切って語り部持ち回り制にしちまおう!」なんてことを考えた黒澤は、1作目では主筋にまったく関係のない「羽佐間」なる少年を語り部にして、外側から見た2人のことを描写することにしたんですね。

 とはいえ、実際に書いてみた羽佐間君はなぜか冷めてる高校生だったので、読者の皆様が共感できたかどうかは微妙な感じになってしまいました。
(この人も「沈着冷静な美少年」なので主人公には向かないキャラですね。うちの小説にはよく出てくるタイプですけど;)
 まあ、彼はシリーズの主人公ではないので、このくらいの露出度でちょうどよかったんじゃないですかね~。
 次のお話ではヒフミの一人称で書いていきますので、内気で病弱な美少女の山崎さんが実はどんなヤツなのか、どうか楽しみにしていてくださいませ。