真・祈りの巫女298
 カーヤはあたしたちの食事を手早く作り上げるとテーブルに並べて、自分はオミの食事を持って奥へ行ってしまったの。なんだかカーヤはほんとに戸惑ってるみたい。もしかしたら、シュウに「カヤコと似ている」って言われたことで更に警戒しちゃったのかもしれない。
 2人ともカーヤの料理は気に入ったみたいで、実際に「おいしい」って口に出しながら笑顔で頬張っていた。それで少しの間会話が途切れてたんだけど、やがてお腹が少し落ち着いたのかシュウが言ったの。
「祈りの巫女、君はどうしてオレたちに根掘り葉掘り訊かないんだ? ……最初は旅人に慣れてるからなのかとも思ったけど、彼女の様子を見ればそうじゃないのは判る。普通だったらもっといろいろ訊くんじゃないのかな。たとえば、オレたちがどうしてあの神殿に現われたのか、とか。なんの目的で旅をしているのか、とか」
 あたしは心の中でかなり動揺してたんだけど、できるだけ表情に出さないように笑顔で答えた。
「それを訊くのはあたしの役目じゃないもの。たぶん食後の会議で守護の巫女が訊ねることになると思うわ。シュウだって何度も同じ説明をするのは嫌でしょう?」
「それはそうだけどね。でも君はいろいろなことに深く関わっているようだし、オレたちが知らないことも知っていそうな気がするんだ。……本当に、オレたちを呼んだのは君じゃないのか?」
「あたしは誰も呼んだりしてないわ。本当よ。もちろん2人のことだって興味がない訳じゃないの。でも、難しい話をするより、まずは2人と友達になりたかったのよ。その方がいろいろ話しやすくなるでしょう?」
「……まあ、確かにそれも一理あるかな」
 シュウはそれでごまかされてくれたみたいで、あたしがほっとしかけたとき、不意に宿舎の扉がノックされたの。カーヤがいなかったからあたしが返事をして扉を開けると、そこにはタキとうしろにリョウが立っていた。
「おはよう、祈りの巫女。……あ、ここにいたのかシュウ! トイレに行くって出ていったきり帰ってこないと思ったら ―― 」
「トツカ!」
 まるでタキの言葉をさえぎるように立ち上がってそう叫んだシュウの視線の先には、こちらも少し驚いた表情のリョウがいたんだ。