真・祈りの巫女300
 あたしが笑顔を崩さずに断言したことで、シュウは少し自信がなくなってしまったみたいだった。リョウは動揺したまま黙り込んでる。タキは不審そうな視線をあたしに向けてきたけど、あたしは黙殺していたの。そんな奇妙な沈黙を破ったのは探求の巫女だった。
「……シュウ、トツカサンがリョウチャンだって、知ってたの……?」
 探求の巫女の声を聞いて、シュウは明らかにぎくりとしたように背筋を緊張させた。
「いつから知ってたの? どうしてあたしに黙ってたの? あたしが小さい頃にリョウチャンと仲がよかったこと知ってたはずじゃない!」
「あ、だからそれは、トツカの奴に頼まれて……」
「リョウチャンに会いたかったんだから! トツカサンがリョウチャンだって知ってたらもっといろいろ話ができたよ ―― 」
 そう、探求の巫女とシュウとがあたしの判らない理由で言い合いを始めてしまったそのとき、不意にリョウがあたしの手を引いて宿舎から連れ出してしまったの。タキは中の2人に気を取られてあたしたちには気づかなかったみたい。リョウは宿舎の裏手まであたしを連れてきて、やっと手を離してくれた。
「どういうことだ。あの2人は」
「昨日の夜とつぜん神殿に現われたのよ。経緯は神官か巫女なら知ってるはずだけど、リョウはうわさを聞かなかった?」
「村では誰もなにも言ってなかった。昨日はランドの家に泊めてもらったんだ。タキも話してくれなかったし」
「きっと驚かせたかったのね。タキらしいわ。……ねえ、リョウ。まさかあの2人のこと、知らないよね」
「……いや。覚えがない」
 あたしが恐る恐る訊いた言葉に、リョウはちょっとだけ沈黙したあと答えたの。あたしはその答えに心からほっとしていた。
「リョウも会議には呼ばれてるんでしょう? あの2人も出席することになってるの。たぶん詳しいことはそこで話してくれるわ」
「……」
「お願いリョウ、あたしと探求の巫女を間違えないでね。あたしはリョウからもらった髪飾りをいつも身につけてるから」
 リョウは何を考えているのか判らない表情をして、あたしの髪飾りをじっと見つめた。