真・祈りの巫女296
 胸を突き刺す小さな痛み。それはきっとあたしがシュウを死なせてしまった後悔の痛みなんだと思う。小さくはなってくれるけど、消えてくれることはない。時々それは大きくなって、あたしの心を沈めてしまうの。
 でも今は、シュウと話している喜びの方が大きかった。シュウはすごく自然な感じであたしに接してくれるから、あたしもぜんぜん緊張しないでいられるんだ。こんな人は初めてだった。逆にあたしは今まで誰といても多少の緊張をしていたんだってことに気づいたの。
 シュウに惹かれていた。あたしにはリョウがいて、リョウのことが1番大好きなのは変わってなかったけど、シュウにも惹かれている自分に気づいていた。ずっとこんな風に話していられたらいいって思ったの。もちろんシュウにだって探求の巫女がいるんだもん。あたしは彼女からシュウを取り上げるつもりなんてぜんぜんなかった。
 カーヤはあたしがシュウと話し始めてからずっと席を外してたんだけど、いよいよ朝食の支度をする時間になったから、台所に戻ってきていた。なし崩しにシュウもここで朝食を食べることになりそうだから、カーヤは5人分もの朝食を作らなければならないんだ。そんなこんなで宿舎の中が騒がしくなったからだろう、探求の巫女が目覚めて部屋のドアから顔だけ覗かせたの。気づいてあたしが席を立つと、カーヤが近づいてきてあたしに耳打ちしたんだ。
「ユーナ、お願いだから1人にしないでよ」
「大丈夫よ。それにあたし、昨日探求の巫女に着替えを貸す約束をしたの。……あたしはどっちでもいいけど」
「……判ったわ。あたしが行く」
 そう言ってカーヤが着替えを取りにあたしの部屋へ行ったから、あたしも食卓に戻る。いぶかしそうに見つめるシュウに言ったの。
「カーヤね、シュウのことが怖いみたい。2人っきりになりたくないんだって」
「なんで? 傷つくなぁ。オレそんな怖そうに見える?」
「見えないわよ。でも、この村にはあまり他所の人は来ないし、来ても巫女宿舎まで踏み入ることはまずないから、みんな慣れてないの。カーヤも慣れてくれば親しく話してくれるわ。だから悪く思わないでね」
 シュウはちょっとすねたようにぶつぶつ言ってたけど、やがて着替え終わった探求の巫女が部屋から出てくると、途端に表情を変えた。