真・祈りの巫女299
「トツカサン! 無事だったの?」
「トツカ、おまえこんなところにいたのか?」
 そう言いながらシュウはテーブルを回ってリョウに近づいていく。少し遅れて探求の巫女も席を立っていた。タキは驚いたようにリョウのことを振り返ってる。リョウも驚いてはいたけれど、声を出すことはしなかった。
「心配してたんだぞ。あのままヤケンの群れに殺されちまったんじゃないかと思って」
  ―― ヤケンの群れ……?
 2人の様子は、カーヤを目にしたときとは明らかに違っていた。あたしも驚いてはいたけれど、冷静になるように自分に言い聞かせて、つとめてのんびりした口調になるように口を挟んだの。
「どうしたの? 2人とも。……もしかして、リョウにそっくりな人を知ってるの?」
 その場にいた全員があたしに振り返った。あたしは笑顔を浮かべて、ゆっくりとした動作でテーブルから立ち上がっていた。
「リョウ……?」
「ええ、探求の巫女。紹介するわ。あたしの婚約者で狩人のリョウよ。……リョウ、この人たちは昨日の夜遅く村に到着した旅人なの。彼がシュウで、彼女が探求の巫女のユーナ。あたしにそっくりで驚いたでしょう?」
 リョウの視線は探求の巫女に釘付けだった。あたしがリョウに近づいて、ちょっと腕を絡ませるようにすると、我に帰ったのかリョウがあたしを見た。かなり動揺しているのが判る。
「……トツカだろ? なんで黙ってんだよ。まさかオレの顔を忘れた訳じゃねえよな」
「シュウ、彼はトツカって人じゃないわ。だってあたしはずっと一緒にすごしてきたんだもの。リョウとそっくりな人と間違えてるのね」
「まさか! こいつは間違いなくトツカだ! あのときオレたちをヤケンの群れから庇って逃がしてくれた ―― 」
「あたしは小さな頃から一緒にいたのよ。14歳のときに気持ちを確かめ合って、あたしの15歳の誕生日に婚約したの。リョウは生まれた時からずっとこの村で育ったんだもん。シュウが知ってるトツカという人ではないわ」