真・祈りの巫女297
 カーヤに付き添われて部屋を出てきた探求の巫女は、着慣れない巫女の服を着たせいか少しぎこちない動作で歩いてきた。もちろんサイズはぴったりで、シュウを見つけると少し照れたように微笑んだの。まるで自分がそこにいるみたいであたしもドキドキしてきちゃったけど、シュウの方が傑作だった。口をぽかんと開けたまま探求の巫女に見惚れてたんだ。
「おはようシュウ、祈りの巫女。……服を貸してくれてありがとう。でもなんかちょっと変な感じ」
「よく似合ってるわよ。……って、あたしが言うのも変ね。でも昨日の服よりもずっといいわ。巫女らしくて」
「大丈夫かな。みんなちゃんと見分けてくれる? 祈りの巫女と間違えられたりしないかな」
「そうね。間違える人もいるかもしれないけど、そのときは言ってくれればいいわ。祈りの巫女は髪飾りをつけてるから、って」
 食卓の椅子に座った探求の巫女は、意見を求めてシュウを見つめたの。それでようやく茫然自失状態から回復したみたい。シュウはちょっと顔を赤くして言ったんだ。
「女が着るもので変わるってのはほんとだな。……おまえに「マゴにも衣装」って言葉を贈ってやろう」
 シュウの言い回しがあたしには判らなかったけど、少なくともほめ言葉じゃなかったみたい。探求の巫女はちょっと口を尖らせた。
「シュウって素直じゃなさすぎ。っていうか独創性ゼロ。それじゃ内心の動揺がバレバレだよ」
「動揺するなって方が無理。……オレはおまえにはジーパン履いててもらった方が助かるんだ」
「なにそれ。シュウも祈りの巫女とあたしの区別がつかないの? 恋人なのに」
「無茶言うな。おまえ、自分と祈りの巫女がどれだけ似てるか判らないのか? しゃべってくれれば判るけど、黙ってられたら誰にも区別なんかつかねえよ」
 シュウはテーブルに肘をついて横を向いてしまったけど、その横顔に「惚れ直した」って書いてあるのが判って、あたし思わず吹き出しちゃったの。でも探求の巫女には判らないみたい。……あたし、いつもカーヤに鈍いって言われるけど、もしかしたらあたしもこんな感じなのかな。きっと探求の巫女も自分のことだから判らないんだ。だってあたしには、シュウが言う「助かる」って意味が、区別がつかないからってだけじゃないのが判る気がするんだもん。