真・祈りの巫女294
 翌朝、あたしはカーヤに揺り起こされて目を覚ました。目を開けるとカーヤの不安そうな顔があったの。いつもと違う目覚めに戸惑ってたんだけど、すぐに昨日はカーヤ部屋で探求の巫女と一緒に眠ったんだってことを思い出していた。
「目が覚めた? ユーナ。……ユーナよね?」
 カーヤは声をひそめて言う。探求の巫女はまだ眠っていて、カーヤは2人の服装を確かめてからあたしの方を起こしたんだろう。それでもぜったいの自信はなかったみたい。
「大丈夫よ。あたしは祈りの巫女の方のユーナだから。……なにかあったの?」
「あの人がきてるの。昨日のシュウって人。お願いユーナ、起きてきて。あたしあの人と2人っきりでいたくないの」
 あたしはシュウが何かおかしなことをする人だなんて思ってなかったけど、カーヤの気持ちも判る気がしたから、なんとか眠気を振り払ってベッドから起き上がった。カーヤがあたしの服を部屋に取りに行っている間に髪を整える。……なんだか鏡を見てると変な気持ちになるよ。この顔とそっくり同じ顔の女の子が、今同じ部屋のベッドに寝てるなんて。
 着替えて部屋を出ると、ものすごく眠そうな顔をしたシュウが、ほとんどテーブルに突っ伏すような格好で座っていた。
「おはよう、シュウ。早いのね。探求の巫女はまだ眠ってるわよ」
「おはよう。……君は祈りの巫女の方だよね。早い、っていうか、けっきょく昨日から寝てないんだ。……参ったよ、あいつ」
「どうして? ベッドの寝心地が悪かったの?」
「ベッドにすら入らせてもらえなかった。……最初はよかったんだ。ふだんオレが眠る時間よりもずいぶん早かったから、宿舎の食堂でタキの奴としばらく話してて。あいつ、すごく好奇心旺盛でさ。空が青い理由から始まって、虹のでき方とか光のクッセツの話とか、四季の変化からワクセイキドウの話になって……あとなに話したかな。とにかくそんなことをぜんぶ説明してたらいつの間にか夜が明けちゃってね。起きてきたほかの神官たちまで寄ってたかってオレに話をせがむ訳。やってられないから逃げてきたんだ。……祈りの巫女、悪いんだけどしばらくオレのことかくまってくれ。ベッドを貸してくれとは言わない。ここでも、どこか他の部屋の隅でもかまわないから」
 ……聞きながら、あたしは大きな溜息をついていた。