真・祈りの巫女290
 シュウの言葉であたしも気づいた。あたしとシュウたちとは、距離の感覚がすごく違うんだ。あたしは探求の巫女が引っ越したと聞いて、マイラがあたしの家の近くから西の森の近くに引っ越したことを思い浮かべていたの。あと、リョウが実家から神殿の近くに引っ越したこと。探求の巫女はきっと、村の中を動いたんじゃなくて、別の村へ行ったんだ。でも、いったいどんな理由があって4歳の子供を持つ両親が村を離れたのかは判らなかった。
 5人分のお茶を用意して、あたしも再びテーブルに戻ってくる。……なんだか不思議。探求の巫女を見ているとすごく恥ずかしい気がするの。あたし、こんな顔をしてるんだ。熱いお茶に息を吹きかけている仕草とか、他の人がしているのならなんとも思わないことが、探求の巫女だと妙に気恥ずかしいんだ。双子の兄弟を持ってる人はみんなそんな風に感じるのかな。それとも、生まれた時から一緒にいればそんなことは少しも感じないまま大人になるのかもしれない。
「ねえ、2人は恋人同士なんでしょう?」
 ちょうどシュウがお茶を飲んでいるときにそう言ったからかな。シュウがむせるような咳をしたからあたしは笑ってしまった。
「……うん、まあ、一応そういうことになってるけど……」
「一応、って、はっきりしないの? 2人は将来結婚するんじゃないの?」
 シュウはちょっと大げさに見える仕草でテーブルに突っ伏してしまったの。探求の巫女の方は赤くなって下を向いちゃってる。……なんで? あたし、変なこと言った?
「……参ったな。まさかいきなりそんなことを訊かれるとは思ってなかった。……それ、今答えなきゃダメ?」
「ううん、そんなことはないわ」
「だったら保留にしといて。……ユーナ、黙ってないでおまえも何とか言えよ」
 シュウの最後の言葉は隣の探求の巫女に向けて言われたものだったのだけど、あたしはちょっと身構えてしまう。だって、ユーナは探求の巫女の名前でもあるけど、あたしの名前でもあるんだもん。……シュウは、あたしを助けて死んでしまった幼馴染の名前。もしもあのシュウが生きていたら、やっぱりこのシュウとそっくりな男の人に成長していたのかもしれない。