真・祈りの巫女289
「カーヤ、神殿の炊き出しはまだ残ってるかな。あたしもみんなもおなかが空いてるの」
「ええ、たぶんあると思うわ。すぐに持ってくるわね。ユーナはお茶をお願い」
「カーヤ1人じゃ4人分は無理だろ? オレが一緒に行くよ」
 カーヤは2人に軽く会釈をして、そそくさと宿舎を出て行った。そのあとをタキが追いかけていく。2人に初対面の挨拶もしなかったところを見ると、やっぱりカーヤはちょっと不安に思ってるみたい。……無理もないよね。いきなりあたしと同じ顔をした人が神殿に現われたんだもん。不安というよりも不気味に思ってたってちっともおかしくないよ。
 カーヤを見送っていた2人を食卓の椅子に座らせて、ものめずらしそうに部屋の中を見回す2人にお茶を用意しながら話しかけた。
「カーヤは誰かに似ているの? さっきカヤコと言ってたけど」
「ああ、オレの家の近所に住んでる女の子にそっくりなんだ。……カーヤっていうんだな。名前も似てる」
「そっくり、って。あたしと探求の巫女くらい似ているの?」
「同じ服を着てたら見分けがつかないくらい似てるな。まるで生き別れの双子の姉妹みたいだ。ユーナと祈りの巫女もそうだし、どうしてこの村にはオレが知ってる人がいるんだろう」
「探求の巫女はその人のことを知らないの?」
 あたしは疑問に思ったことをそのまま口にしていたの。だって、カヤコはシュウが知っている人なのに、探求の巫女が知らないのがすごく不思議に思えたんだもん。
「ユーナは4歳のときに引っ越したんだ。オレもカヤコも小さな頃はよく遊んだんだけど、ユーナが引っ越してからは1度も会ってなかったんだ。だからオレもユーナと会うのは12年ぶりくらいじゃないかな」
「1度も? シュウがいた村には祭りはないの? だって、どんなに遠くに引っ越したって、お祭りで年に1回くらいは会えるでしょう?」
 あたしの言葉に、シュウと探求の巫女は驚いたように顔を見合わせた。
「ユーナが引っ越したところはそんなに近くじゃないんだ。……歩いたら丸1日くらいかかる程度には遠いと思うよ」