真・祈りの巫女288
 シュウの言葉の意味は判らなかったから、あたしは聞き流すことにして、祈りの巫女宿舎の扉をノックした。幸いカーヤはまだ起きていてくれたみたい。扉を開けて、あたしに微笑みかけてくれたの。うしろにいた3人にチラッと視線を向けたけど、扉を大きく開けただけでひとまずあたしを宿舎に招きいれてくれた。
「お帰りユーナ。聞いたわ。とうとう祈りが通じたのね、おめでとう」
 神殿に戻ってから初めて、あたしはほっとしている自分を感じていた。だって今までは誰もそう言ってくれる人がいなかったんだもん。もちろん神殿に新たな問題が起きていて、みんなそれに気を取られてたからだってことは判ってたけど、やっぱりあたしは自分の祈りが通じたことを誰かにほめてもらいたかったんだ。
「ありがとう。カーヤにそう言ってもらえて嬉しいわ。……さあ、みんな入って。カーヤ、今日は探求の巫女にここへ泊まってもらうことになったの。かまわないでしょう?」
「ええ、……あたしはもちろん」
 カーヤがちょっと不安そうに言ったのは、きっと探求の巫女と一緒の部屋を使うことになると思ったからだ。誰だって初めて会った人と同じ部屋に2人きりになるのは不安だもん。あたしは今夜の寝室を交代してもらう話をしようとしたんだけど、ちょうど扉を入ってきたシュウに遮られてしまったの。
「……カヤコだ」
「え? カヤコチャン?」
 探求の巫女の声に振り返ると、彼女はシュウを見上げて不思議そうな顔をしていた。シュウは少しの間カーヤを見つめて、やがて探求の巫女に向き直る。
「ああ、カヤコだ。……4歳のとき以来会ってないんじゃユーナが判らなくても無理はないな。でもオレはずっと近くに住んでたから判るよ。彼女、間違いなくこっちの世界のカヤコだ」
 シュウの言葉の意味がすべて判った訳じゃないけど、あたしは以前リョウが初めてカーヤを見たときのことを思い出していた。