真・祈りの巫女285
 あたしが、この人たちを呼んだ? 思いがけないことを言われてあたしは思考を止めてしまった。……あたしは誰も呼んだりしてないよ。ううん、それよりどうして探求の巫女がそんなことを言うの?
 あたしが黙り込んでしまったからだろう。今までずっと成り行きを見守っていた守護の巫女が動いたの。もしかしたら、あたしにはこの話し合いをおさめるだけの力がないことを察したのかもしれない。
「まだ名乗ってなかったわね。初めまして、探求の巫女、左の騎士。私はこの村の守護の巫女で、村の代表者よ。もう1人の守りの長老は今ここにはいないけれど」
 探求の巫女と左の騎士は、とつぜん会話に加わった守護の巫女に驚いたのか何も答えなかった。
「うしろにいるのは神官のセリとタキ。……話の途中で悪いのだけど、長くなりそうだから今日のところはこれでおしまいにしたいと思うの。祈りの巫女もかなり疲れているのよ。もう既に真夜中でもあるし、話はまた明日にしてはどうかしら」
 2人は、もう何度目か判らないけどちょっと視線を合わせて、やがて左の騎士が答えた。
「そうだな。こんな夜中にこんなところで徹夜で話すことはないよ。オレも明るいところで落ち着いて話した方がいい」
「賛成してくれて嬉しいわ、左の騎士。それでね、2人が今夜過ごす場所なのだけど。……さっき祈りの巫女も言ったとおり、今この村は正体不明の怪物に襲撃されているの。だから本来なら旅人は村の宿屋に泊まってもらうのだけど、いろいろ制約があってそれはできないのよ。普段のときなら神殿の宿舎にも空き部屋があるのだけど、怪我人を収容していることもあって個室は難しいわ。だから今日のところは2人とも別々の建物に分かれて休んでもらうことになるの」
 守護の巫女の言葉には2人とも戸惑ったようだったけど、うしろにいたセリとタキも互いに顔を見合わせていた。
「守護の巫女、あたしの宿舎には1つベッドが空いてるわ。探求の巫女さえよければあたしの宿舎に来てもらって」
「神官の共同宿舎も1つくらいなら空いてるベッドがあるはずだよ。左の騎士はこっちで引き受けられる」
 あたしとタキの言葉に、守護の巫女は大きくうなずいた。
「それでどうかしら。離れてしまうのは不安かもしれないけど、一晩中神殿にいるよりはいいと思うのだけど」