真・祈りの巫女284
「神殿? ……オレたちは神殿に飛ばされてきたのか」
 探求の巫女という言葉。どうして彼女があたしにそっくりで、同じユーナという名前なのか。探求の巫女に存在する左の騎士。彼はどうしてシュウという名前なのか。
 あたしには知りたいことがたくさんあった。だけど、それより先に確かめておかなければならないことがあったんだ。リョウが最初に現われたときに村の代表としてタキが確かめたように。今、あたしはこの村の代表になってるんだから。
「1つだけ先に教えて」
 いくぶん自分の考えに沈んでいた左の騎士は、あたしの声に再び顔を上げた。
「あなたたち2人は、なんの前触れもなくとつぜんこの神殿に現われたの。今、あたしたちの村は獣鬼の脅威にさらされている。だからこんなことを訊かれて気を悪くしないで欲しいんだけど……。あなたたち2人は、あたしたちに何かの危害を加えるためにこの村に来たの? それとも、なにか別の目的があって、この村に来たの?」
 2人はどう答えようか迷っているように、顔を見合わせて低く言葉を交わした。あたしは近くにいたから2人の会話は聞き取れていたんだけど、言葉が抽象的でその意味を汲み取ることはぜんぜんできなかった。でも、声の調子から、あたしたちが悪い人か否かを話し合ってるみたいに思えたの。確かに初対面の2人にはそう取られても仕方がないんだ。それはお互い様だったから、あたしは心の中で苦笑した。
 やがて、話し合いが終わったのか、こちらに向き直って話し始めたのは左の騎士の方だった。
「オレたちはずっと旅をしてきたんだ。自分自身でも旅の目的が判らなくて、だからそれを探す旅だったと言ってもいい。この村に来た本当の目的も自分では判らないんだ。……こんなことを言っても信用してもらえるかどうか判らないな。だけど、少なくとも今の状態では、オレはこの村の誰に危害を加えるつもりもないよ。むしろ、オレはこの村が抱えている問題について、多少の手助けができるんじゃないかと思ってるくらいなんだ」
 左の騎士はそこで言葉を止めたけど、その先を探求の巫女が引き継いでいた。
「あたしたちを呼んだの、あなたなんじゃないの? ……祈りの巫女のユーナ」