真・祈りの巫女262
 夕方まで、あたしはずっと忙しい思いをしていた。あたしの祈り台を作ってくれるきこりは2人いて、あたしたちが行く頃にはほとんどの廃材を崖の下まで運び終えていたの。きちんと場所を決めてなかったから、あたしとリョウはまず1番見晴らしのいい場所を探して岩場を歩き回った。おおよその場所を決めたあと、リョウはあたしを祈り台の高さまで抱き上げて、その位置からどのくらいの範囲が見渡せるか2人で確認した。
 きこりたちが材木の寸法を測って印をつけたところを、リョウがのこぎりで切っていく。リョウは自分で坂道の階段を作ったりするくらいだからすごく器用で、きこりたちに「狩人をやめてきこりにならないか?」なんてからかわれるくらい。あたしも梯子にする細い材木を切らせてもらったんだけど、ぜんぜんリョウみたいに上手にできないの。あたしは切り終えた材木を岩場まで運んだり、休憩するみんなのために川から水を汲んできたりすることで、わずかながらの協力をしていた。
 きこりたちが作業をやめたとき、日はまだそれほど低くなくて、祈り台はまだ外形すらもできていなかった。でも、2人ともそれ以上作業を続ける気はないみたいで、あたしたちも2人にお別れを言ってその場をあとにしたんだ。
「まだ早いけど祈りの巫女は宿舎へ送っていこう。リョウは? これからどうするんだ?」
「ランドが教えてくれた店へ行ってみる。ほかの狩人も何人か来ることになってるんだ」
「それならあたしも一緒に行く。マティの怪我も気になってたところだったの。お店が開けるってことはもうよくなったのかな」
 マティは、父さまと母さまが死んだ2回目の影の来襲で怪我をしていた。あれからもう6日も経つから、きっとすっかりよくなってるんだろう。……そうか、あれからもう6日経つんだ。同じときに怪我したオミはまだ起きられないくらいだから、マティはオミほどひどい怪我はしなかったんだ。
 マティの店は以前と変わらないままそこにあった。あたしが先に立って扉をくぐると、マティは笑顔で迎えてくれた。
「やあ、久しぶり、ユーナ。リョウもきてくれたんだな。そちらの神官は誰だい?」
「こんにちわ、マティ。この人はあたしの世話係をしてくれてるタキよ。怪我の具合はもういいの?」
「まだ少し痛むけどね、仕事ができないほどじゃないよ。このところ店の方も忙しくてゆっくり寝ていられないんだ」