真・祈りの巫女261
 リョウの言ってることはさっぱり判らなかったんだけど、それきりリョウは機嫌がよくなったから、あたしはあんまり気にしないでいた。神殿までの道すがら、リョウはミイが今日家に帰ったことを教えてくれたの。どうやらリョウが動けるようになったから、ランドの方が心配で置いておけなくなったみたい。それでも何日かに1回は洗濯や掃除に来てくれるみたいだけど、食事は自分でどうにかしなければならないから、夕食は村に降りてランドが教えてくれたマティの酒場に行ってみるんだって言った。
 こうしてリョウが笑顔でいろいろ話してくれるのは久しぶりで、あたしはすごく嬉しかった。まるで記憶があるときのリョウが戻ってきたみたい。リョウは機嫌がよさそうだったから、あたしはさっき気になったことをリョウに訊いてみることにしたの。
「ねえ、リョウ。さっきオミと何を話してたの? なにか約束してたでしょう?」
「え? ああ。別にたいしたことじゃないよ。気になるのか?」
「うん、ちょっとだけ気になる」
「本人はたぶん、おまえにはあんまり知られたくないと思うぜ。気になるなら直接オミに訊いてみればいい。……足元気をつけろよ」
 リョウに手を貸してもらいながら、足元の水溜りを飛び越える。それでごまかされちゃったみたい。リョウはまたたわいのない話を始めてしまったから、あたしはそれ以上オミの話を蒸し返すことはできなかった。
 神殿へつくとリョウはまっすぐに神官の共同宿舎へ向かったんだけど、その途中でタキと行きあっていた。
「リョウ、遅いから材木の手配だけ先にしておいたよ。……手間取ってたのか?」
 うしろにいたあたしにチラッと視線を向けてタキが言う。タキの言わんとしてることが判って、あたしはちょっと恥ずかしくなっちゃったんだけど、リョウは笑顔で首を振った。
「いや、手間取ったのは俺じゃなくてこいつの方だろ。きこりは? もう下に降りてるのか?」
「ああ、先に行ってる。影に壊された建物の廃材が使えればいいけど、いい材料がなければ森から切り出さなきゃならないらしいからね。急がないと間に合わないんだってさ。オレたちも行こう」
 タキはリョウの言葉に首をかしげながらも、それを深く追求することはしなかった。