真・祈りの巫女260
 再び、あたしはベッドの縁に座って、うつむいたリョウの顔を見つめていた。こうして見つめていると、リョウがすごくカッコいいんだってことに気がつくの。顔が際立って整ってるとかそういうんじゃなくて、リョウが持つ野性的な雰囲気があたしをすごく惹きつける。リョウが野性的だなんて、今まではそれほど感じたことがなかったよ。リョウは自分のそういうところをあたしの前では隠しているようで、いつも優しい雰囲気で接してくれていたから。
 どのくらいそうして見つめていただろう。沈黙したまましだいに自分に沈み込んでいったリョウは、このときふっと何かを思い出したように笑ったの。それからあたしを見つけて、満面の笑顔で笑いかけてくれる。自然にあたしも笑顔になってることが見なくても判った。
「おまえ、必死だな」
 リョウにつられて、あたしも満面の笑顔で答える。
「必死だよ。だって、リョウにふられちゃったらあたしほんとに困るんだもん」
「男を確実に繋ぎ留められる方法、教えてやろうか」
「うん、教えて」
 リョウはちょっとだけ意地悪そうに笑った。
「目の前で服をぜんぶ脱ぐ」
 あたし、リョウの言うことにびっくりした。服を脱ぐって。……ちょっと、恥ずかしいけど、リョウに見せるんだったらいいよね。あたし、たぶんそんなにスタイルいい方じゃないと思うけど、それでも効果あるのかな。
 少しだけためらいながらも胸のボタンに手をかけると、リョウはベッドから立ち上がって、あたしの髪をくしゃっとかき混ぜた。
「嘘だ。冗談だ。真に受けるな」
 そう言うとすたすた歩いて部屋を出て行こうとしたから、あたしもうしろ姿を追いかけながら声をかけた。
「なにが冗談なの? 服を脱ぐのが冗談? それとも服を脱いだだけじゃダメだってこと?」
「時と場所を選ぶってことだ。おまえの場合は結婚してからでいい。……間違ってもほかの奴には見せるなよ」