真・祈りの巫女256
 あたしは、このリョウの言葉を、かなりの割合で予想していた。
 でも、実際に聞いたときの衝撃は予想していた以上のものがあった。どうして自分がそんなに衝撃を受けたのか、あたしはその理由を自分では理解できなかったの。どんどん気分が落ち込んできて、周りのことがどうでもよくなってきて、だからあたしはリョウとタキの会話をいくつか聞き逃してしまったようだった。
「 ―― なるほど、それが右の騎士の力な訳か。……それにしても残念だな。オレは自分こそが左の騎士なんじゃないかと少しは期待してたんだけど」
「おまえが騎士ならこいつにはぜったい近づけてない」
「別にオレは ―― 」
 このとき、タキはあたし方を振り返って、あたしの顔を見て表情を変えた。
「祈りの巫女? ……どうしたんだ? 顔色が悪いよ」
「ううん、なんでもない。……何の話だったの? ちょっと聞いてなかった」
「たいした話じゃないよ。それより少し休むかい? カーヤを呼んでくる?」
 あたしは心配させないように笑おうとしたんだけど、それはうまくいかなかったみたい。リョウが席を立ってあたしの額に右手を当ててくれる。別に熱はないと思うよ。心配そうに見つめるリョウにそう言おうとして、でもリョウはちゃんと判ったみたい。タキを振り返って言ったの。
「あとで宿舎へ行く」
 それだけでリョウの言いたいことは伝わったようでタキは席を立った。タキがいなくなってしまうと、リョウはあたしの肩を抱くように顔を覗き込んだ。その目に驚くほど強い激情をたたえて。
「いったい何がショックだった? シュウのことか? シュウが右の騎士だったことがそんなにショックだったのか? おまえはそんなにシュウのことが好きだったのか!」