真・祈りの巫女253
 リョウがオミにどんな約束をしたのかすごく気になったけど、それきりリョウは部屋を出てしまったから、あたしは何も聞けずに2人に続いて部屋を出た。お天気がよくなったから、カーヤはお洗濯をすると言って宿舎を出てしまって、食卓のテーブルでリョウとタキと3人で少し話をしたの。2人ともたぶん少し寝不足気味だった。そのためかリョウはあんまり表情を表に出してなかったんだけど、そんなリョウもすごくかっこよく見えてあたしはまたリョウに見惚れちゃってたんだ。
「 ―― 俺はまだ神殿のことがよく判ってないんだが、タキとおまえはどういう関係なんだ?」
 訊かれて、あたしがとっさに答えられずにいると、タキが少しあわてたように言ったの。
「オレは祈りの巫女担当の連絡係だよ。ふだん何もないときにはカーヤが世話係なんだけど、何かことが起こったときには名前のある巫女1人に最低1人ずつ担当神官がつくことになるんだ。今回はオレが祈りの巫女についたけど、すべて片がついたらオレは祈りの巫女の担当を外れる。それだけの関係だよ」
 タキのあわてぶりに首をかしげたのはリョウだった。やがて何かに気づいたのか、ちょっと意地悪そうに笑ったの。
「俺は別におまえとこいつのことを疑ってるんじゃねえよ。……それともナニか? 婚約者の俺に疑われるようなことをしてるのか?」
「……! ……なにを言ってるんだ。オレは別に……」
 タキはちょっと顔を赤くして絶句しちゃった。こんなタキを見るのは初めてだよ。あたしはそんなタキの反応の意味が判らなくて、きょとんとしてタキの顔を見つめたの。その視線に気づいたタキはあたしから目をそらして横を向いてしまっていた。
「祈りの巫女、リョウは1度死んで性格悪くなったんじゃないか?」
「……そうかな。リョウって優しかったけど、昔からちょっと意地悪なところがあったよ。特に子供の頃はよくあたしのことをいじめたの」
「さっきは食堂で俺に『以前より付き合いやすくなった』って言ってなかったか?」
「言ったよ。……でもこういう性格の悪さを持ってるとは思わなかった」
 タキはすねたように下を向いてしまったけど、けっしてリョウを嫌っているようには見えなくて、あたしはこの2人が以前より仲良くなってくれたことを単純に喜んでいたの。