真・祈りの巫女252
 3人で長老宿舎を出たときには雨はほとんど上がっていて、晴れ間も見え始めていた。時刻はお昼を過ぎたところだったから、あたしはリョウが食事をどうするのか心配したんだけど、あたしよりも先にタキが宿舎の食事にリョウを誘ったの。タキがいる共同宿舎は人数が多いから、1人くらい増えたところでどうってことはないんだ、って。だからあたしはそこで2人に別れを告げて自分の宿舎に帰った。食事が終わったらタキとリョウはあたしの宿舎に来てくれることになったんだ。
 カーヤと2人だけの食事を終えて、カーヤがオミの食事を介助している間、あたしは神殿に入って祈りを捧げたの。今怪我をして苦しんでいる人や、家族を失って悲しい思いをしている人。それぞれの名前を神様に告げて、できるだけ早く傷が癒えるように祈った。それと、明日の影の襲来では被害が最小限ですむように。リョウが、再び影のために命を落とさずにいられるように。
 いつもよりもほんの少しだけ時間がかかったけど、無事に祈りを終えて宿舎に戻ると既に2人は来ていたみたいだった。
「遅くなっちゃった。2人とももうきちゃったの?」
「お帰りユーナ。リョウとタキならオミの部屋にいるわよ」
「オミの? どうして?」
「さっきちょっとそんな話が出たら、リョウが見舞いたいって。ユーナも行ってみたら?」
 あたしはそれでなんとなく納得して、オミの病室のドアをノックしたの。部屋の中からはそれまで話し声が聞こえていたんだけど、不意に止んで、内側からタキがドアを開けてくれる。……なんだろう。深刻な話をしていたのかな。上半身を起こしてこちらを見ているオミも、そのオミの傍らの椅子に腰掛けて振り返ったリョウも、少し雰囲気が重苦しく思えた。
「どうしたの? ……あたし、邪魔だった?」
「いや、そんなことはないよ。こっちの話はちょうど終わったところだから」
 タキがそう答えて笑顔であたしを招き入れてくれる。その笑顔も、何かをごまかしているようで少し虚ろな感じに見えた。そのとき、リョウが椅子から立ち上がって言った。
「オミ、また来る。……約束は守る。安心しろ」