真・祈りの巫女250
 リョウの話を聞いていると、あたしの役目がものすごく重要なんだってことが意識されて、しだいに不安が募っていった。同じことを守護の巫女も感じたみたいだった。
「もしも、万が一祈りの巫女の祈りが通じなかったらどうするの? あの穴が時間稼ぎにしかならないのだとしたら、今までと同じことが繰り返されるだけだわ」
「そうだな。あんたの言う通りだ。おそらく獣鬼の数は今までより増えてるだろうから、更に被害が広がるのは間違いない」
「打つ手がないってことね」
「ああ。ない」
 リョウがそう断言したから、その場の空気が一気に重くなっていった。それでも、守護の巫女が黙り込んでいたのは、そう長い時間じゃなかった。
「今まで、祈りの巫女は目に見えた成果を出してはいないわ。でも、それは祈りの方法に問題があったのかもしれない。それに、守りの長老は言ったわ。祈りはけっして届いていない訳ではない、って。実際リョウを生き返らせる祈りは神様に届いて、こうして今私たちを助けてくれているんだもの。今回の祈りが届く確率はそれほど低くはないはずだわ」
「同じやり方をしていてもその後の展望はない。何でも試してみるしかないんだ。今回のやり方で祈りが通じないなら、また別のやり方を試せばいいだろう。そんなに悲観したものでもねえよ」
「……そうね、あなたの言う通りだわ」
「あんたが決断するんだ。祈りの巫女が村に降りれば影に殺される可能性はある。だがこのまま同じことを繰り返していれば、いずれは村が滅びる。早いか遅いかだけだ。そして、早く決断すればそれだけ多くの人間が助かる可能性もあるんだ」
 まだ決断を迷っているらしい守護の巫女に、リョウは続けて言った。
「祈りの巫女は村のために俺をよみがえらせた。神だかなんだかは祈りの巫女の祈りをかなえて、俺をここへ呼んだ。俺は死んでいた間に多少の知識を得たが、今の俺にできるのはこれが精一杯だ。右の騎士は身体の騎士、頭を使うのは苦手だからな」